御嶽黒光真石(おんたけこっこうまいし

◆ 採掘地・丁場

長野県木曽郡木曽町三岳

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◆ 主な特徴

一つとして同じ形がなく、石肌、模様など、独特な表情が大きな特徴。記念碑やモニュメント、石碑などで使用されています。御嶽山には、この黒光真石で製作された霊神碑(れいじんひ)が所狭しと並べられています。

◆ 御嶽黒光真石の有名な使用例

御嶽黒光真石の岩質データ

分類:安山岩

吸水率:―

硬度:―

御嶽山の麓で 産出される銘石

JR名古屋駅より特急しなのに乗り、約1時間30分で木曽福島駅に到着。そこから車で20分ほどの場所に御嶽黒光真石の採掘元・田中石材店(田中充昭社長)がある。御嶽黒光真石の取材として、これまでに数回この地を訪問させていただいているが、日本屈指の霊山「御嶽山」に近づくにつれ、御嶽信仰の方たちが建立された数多くの霊神碑が目に入ってくる。合計2万基以上ともいわれているこの霊神碑が道沿いに並ぶ光景は、御嶽山に近づいていることを知らせてくれる合図でもあり、自然と気持ちも引き締まってくる。

田中石材店は現社長の祖父である田中米作氏が創業。米作氏は松本市の北隣・豊科の出身で、若い時に近隣の石材店で修業。大正10年に現在地の三岳地区で石材店を開業した。当時、御嶽信仰の信者らが建立する霊神碑の製作・施工の仕事が多く、それに伴い同社も発展してきたそうだが、この霊神碑に使用されているのが、地元で産出される御嶽黒光真石である。
ontakekokkoumaishi04御嶽黒光真石は安山岩に分類され、玉石の状態で採掘される。以前は近くを流れる白川の河原で採掘していたが、許可が難しくなり、現在は御嶽山の麓にある川の近くで採掘されているという。御嶽黒光真石の特徴は、黒を基調とした落ち着いた色合い・皮肌の風合いなどもあるが、一つとして同じものがない稀少性も大きな魅力と言えるだろう。

現在は主に記念碑材として愛用されているが、和型・洋型・自然石型も含めて「墓石材」として使用されることも少なくない。一つ40トン以上という大材も数多く採掘されており、現在ストックしている中には長さ12尺、幅7尺というものもある。形はもちろん、色合いや模様、風合い等もそれぞれによって少しずつ違いがあり、見積もり依頼があった場合、3~4点の写真を付けて選んでもらうようにしている。ただし写真だけではイメージと違ってしまう可能性もあり、お施主には出来る限り現物を自分の目で見てもらい、納得してもらった上で決定してもらうようにしているという。

加工・字彫り・ 石工事にも対応

現在、御嶽黒光真石を採掘しているのは田中石材店1社のみで、自社工場にて加工・字彫りも行なっている。ワイヤーソーや大口径、自動研磨機、サンドブラストなど加工設備も充実しており、記念碑加工用として少しずつ改造していることも大きな特徴。例えば、大口径は丸い玉石でも切削しやすいような工夫が施されているほか、自動研磨機も不定形な石材に対応できるように設定。サンド室も長さ10尺・奥行き10尺くらいの大型サイズで、さらに上に伸ばせるような設計になっているという。同社では記念碑の施工(石工事)にも対応しており、独自の石組み設計なども提案している。記念碑の場合、形によっては吊り方等も注意しなければならず、特に大型の場合には同社へ依頼した方が安心でもあるだろう。

田中充昭社長は高校卒業後に岡崎産地での石工修業経験を持つ。御嶽黒光真石は、一つとして同じものがないことから、加工も毎回同じというわけにはいかない。頭を使うことも多いと言うが、それだけに完成した時の充実感、そしてお施主や取引先からいただく感謝の言葉が仕事のやりがいになっているという。

石材業界全体で厳しい話題が多い中、記念碑に関しても受注数全体は伸び悩んでおり、サイズの小型化傾向も進んでいるという。ただし記念碑の場合には「現物を見ないとイメージと異なる」というリスクもあり、輸入材の影響はそれほど多くはないようでもある。同社ではこれまでに北海道から沖縄まで、全国各地で建立実績を重ねてきており、取引先の中には何十年ものお付き合いという石材店も少なくない。ここ数年は、岡崎ストーンフェアなどへの出展を通して、新しい取引先も徐々に増えてきているようでもある。

「厳しい時代ですが、当社の独自性を活かしながら、一人でも多くの方に御嶽黒光真石の魅力を知ってもらえるよう努力していきたい」と田中氏。落ち着いた口調の中にある、石への愛着や仕事に対する誇りを胸に、これからも御嶽黒光真石というブランドをしっかりと守り続けていく覚悟だ。

 田中石材店

長野県木曽郡木曽町三岳2841−3
電話:0264-46-2309

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