芝山石(しばやまいし)

◆ 採掘地・丁場

福島県芝山県立公園の一角

◆ 主な特徴

芝山県立公園の一角から産出される花崗岩。吸水率が低く、高硬度の石質で墓石等に適した素材。上品で落ち着きのある輝きは、永遠の墓石に適した石であり、みちのくの味わい深い素材でもあります。

◆ 芝山石の有名な使用例

芝山石の岩質データ

分類:花崗岩

見掛け比重:2.62(t/m3)

吸水率:0.09(%)

圧縮強度:104.83(N/mm2)


福島県産「芝山石」

上品なツヤを持つ芝山石にさらに磨きを追求する職人魂

「芝山石」はその名の通り、阿武隈山系の芝山で採石されており、福島県南部のいわき市・古殿町・平田村の三市町村にまたがる芝山県立公園の一角から産出される花崗岩である。多種多様な石種が採れる福島県の白系御影石の代表的な銘柄のひとつであり、日本全国でも屈指の吸水率の低さが特筆すべき特徴として挙げられる。

芝山石の丁場にて

芝山石の丁場では、玉石の状態で採れる層と岩盤になっている層がある

この「芝山石」を採掘しているのは有限会社藤井石材工業(福島県小野町)で、前事業者から採掘権を引き継ぎ、2000年(平成12年)から採掘事業を行なっている。同社の藤井宗明社長に丁場を案内していただいた。

藤井宗明社長

「玉石の状態で採れる層と岩盤になっている層があります。今見えているところは玉石の状態になっている層で、大きな玉だと品質が安定していることが多いですね。

玉石はキズがほとんどなく、岩盤になるとややキズが出てきます。それでも全体的にキズは少ない石ですね。難といえばムラが多少出る部分がある点でしょうか。玉石の層は黒色火薬、岩盤の層はワイヤーソーを使っています」。

芝山石は白系御影石であるが、細目と中目があり、細目のほうは色が濃く青みをたたえている。その中でも特に青みが強いものは『極』と呼ばれ、特級材として人気が高い。細目と中目ではバックホーで掘り出すときの音も違うようで、目が詰まっているために硬度も高い細目の場合には、金属音に似た音が出るとのことである。

「削り取った場所を緑化して山づくりをしながらの採掘なので、時間もコストもかかってしまいますが、キズの少ない石なので歩留まりは悪くありません。現在の出荷の割合は、原石出しが6割、工場出しが4割ですが、これからは原石と製品が半々になっていくだろうとも考えています。

問屋さんを通じて、そしてまた小売店さんから、芝山石の注文をいただいていますが、関東、北陸、東海、関西など、かなり広いエリアで使っていただいています」。

原石の予定出荷量は年間約1万2千才とのこと。上品で落ち着きのある石目が特徴となっている芝山石は、ツヤ持ちの良さや経年変化への強さも相まって、福島の銘石のひとつとして広く知られている。採掘元であるだけでなく自社工場で加工も行なっている同社では、原石と同じ量の製品を出荷できる態勢が整えられており、加工メーカーとしてのクオリティの高さも評価されている。

 

こだわりの砥石研磨でワンランク上の品質を

工場内には加工設備が充実している

石の切削音が響く同社の工場にて

同社の工場では芝山石の加工をメインにしながらも、浮金石、磐梯みかげ、吾妻みかげといった福島県内の各種銘石や、岩手の姫神小桜なども製品化している。神奈川の本小松石やインドのクンナムなどを加工することもあるとのことで、どんな石種もこなせる幅広い対応力と加工精度の高さが持ち味である。そして特筆すべきなのは、すべての製品を砥石研磨によって加工するというこだわりである。

「芝山石の採掘元として良いものを手頃な価格で提供することによって、お墓や建築の分野で皆さまのお役に立っていきたいという気持ちは強いですね。それと同時に、これからの時代に本業で生き残っていこうとすれば、何か特色を持っていなければならないでしょうから、ワンランク上の品質を追求した工場生産ということを意識しています。息子(藤井健詞さん)が修業から戻ってきてから、そういう面にも力を注いでいます」。

藤井健詞さん

藤井健詞さんは茨城県・真壁産地の有限会社坂口石材工芸(茨城県桜川市)での修業を経てから、同社の工場で働いている。同社が多彩な石種を加工することにおいても、健詞さんの修業経験が活かされていることだろう。

「真壁産地の坂口石材工芸さまでは、さまざまな石種の加工を数多く経験させていただきました。ここでの経験が今の自分をつくってくれていると心から感謝しています。

また、庵治産地へお伺いさせていただいた際に見聞きした、庵治石というブランドへのこだわりや質を重視した取り組みもとても印象的でした。『自分たちの芝山石もできるだけ良いものにして出していきたい』という思いが強くなり、石にダメージを与えない砥石研磨に力を注ぐようになりました。

砥石研磨は通常の作業の倍ほど時間がかかり、効率はどうしても落ちてしまいますが、自分たちの時間ならどうにかできるので、手間を惜しまずにすべての製品を砥石研磨で仕上げています。忙しい時代には無理だったかもしれませんが、一組の加工にかけられる時間は昔より増えているということもあります。

自分で納得できるところまで、細かいところにも気を配って仕事をしています。半分は自己満足なのかもしれませんが、こだわりのある石材店さまとの新しいつながりもできてきましたし、芝山石以外の石種の加工を頼まれることも増えてきました。これからもお客様に喜んでいただける製品づくりを心掛けていきたいと思っています」。

 

同社の工場で働く加工職人は6名。職人の高齢化や人手不足の課題を抱える石材業界であるが、30代が4名という若い職人たちが加工を担っていることも同社の特徴だろう。石材の埋蔵量は無限ではないため、いつかは山も枯渇する可能性があるという将来的なリスクも考えながら、品質にこだわった製品づくりに取り組む同社の姿勢が頼もしい。

同社工場で働く6名の加工職人(右から3人目が藤井健詞さん)

 

有限会社藤井石材工業

福島県田村郡小野町大字浮金字山口279
電話:0247-73-2101

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