彫刻家に聞く「石の魅力とは」vol.11(尾崎 慎氏)

この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は愛知県豊田市にあります豊田画廊で開催された尾崎慎さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

――石彫家の尾崎 慎さんが考える「石の魅力」とは?

「石の魅力っていうのは、やっぱり不変的なものっていうのが一番の魅力だと思います。素材によっては、今回の様に大理石を使っているからそうではないものもありますが、でもやっぱり根底には不変的ってことに尽きるんじゃないかなと思います。自然界の中でもいちばん朽ちにくい素材ですよね。

石にハマった理由は、多摩美術大学に入って、ひと通り色んな素材を経験させてもらったんですが、石が僕にとって一番不自由だったんです。他の素材はすんなり出来たんです。
粘土も得意だったし、木彫も金属もいい感じで出来たんです。でも、石だけがどうしても思うようにならなくて、これが自分の思うようになったら自分の人生においても自信がもてるんじゃないかってとこから始まってるんです。
大学の最初の頃は思うように出来なくて、課題が僕だけ遅れてっちゃうんです。自分の思うような形にならないまま課題を提出して、歯がゆい思いをしていました。でもやっていくうちにのめり込んでいって、大学院の頃には体力的にもついていたし、結構自由に扱えるようにはなっていました。

今回の個展では大理石の作品を多く発表しました。大理石を使った作品を作ったのは、昨年バレンタインの石像を制作したのがきっかけです。
バレンタイン像の依頼はイタリアの聖バレンタインデー発祥の地、テルニ市のバレンタイン文化協会からだったので、イタリアのビアンコカラーラを使って制作しました。制作した像は180㎝あり、使った石はビアンコカラーラの大きな石だったので、粗取りをして大きいコッパが出たので、自分の作品にも大理石を使ってみようかなと思って、今回の作品に使いました。
もともと赤い石や黒い石を昔からやっていて、何百個と作っていると違う変化が欲しくなってきて、大理石にも挑戦してみました。軟らかい石なので扱いづらく、磨きも難しく、慣れている黒御影石より手こずってしまいましたが、まぁ慣れですね。

黒御影石を使った「風に立つ」と尾崎さん

展覧会において、今回の様に大理石の作品をメインにしてみたり、日本の石しか使わないとか、テーマ性をもってやっていきたいです。形は自分の形があるので、素材を変えていろいろな事をやっていきたいなぁと思っています」とおっしゃっていました。

また、尾崎さんは3年前から日記彫(にっきちょう)という日記代わり?に粘土で1日1作品、陶の作品を毎日制作されています。今回の個展中も毎日制作されていて、個展期間中に1000点目の作品を達成されたそうです。

今回の個展では今まで制作した陶の作品の中から数点選んで、石の作品と一緒に展示されていました。陶彫の作品は焼き締めて釉薬をかけているので、いろんな色の作品を楽しめました。壁面作品はクレパス画の作品で、石の作品も白大理石が多く、今回の個展はいつもと全く違った明るい雰囲気で、尾崎さんの作品を楽しませてもらいました。