この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京都・六本木にあります国立新美術館で開催された二紀展で、吉田典代さん、渡部順子さんにお話を聞かせてもらいました。

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石彫家 吉田典代さん、渡部順子さんが考える「石の魅力」とは?

吉田さん
「石の魅力は、やっぱり一言で言うと、一つとして同じものが無いので、貴重なものであるということ。また、長い年月を過ごしてきた天然素材であって、とにかく自分よりも年上なので大切に扱いたいなぁ。そういった存在感のあるものなので、敬意を込めて使いたいなぁと思っています。

私の作品の場合は外国の石が多いので、違う国の地層の中から採掘されたものや、海の中から上がってきたもの、そういった時間の流れを感じながら作品を作っていきたいなぁと思っています。
あと自分が死んでも石は残るものなので、責任は重大なんだけれども、自分が生きた証しとして、石の作品は永遠に残るものだということ。それはすごく嬉しいなぁと思います。

そもそものきっかけは、「何か生きた証しを残したい」っていうのがあって、大学で彫刻を専攻して石を彫ったのがとても楽しかったし、生きた証しを残すのに、石がすごくマッチした。確かめながら作るっていうのと、一発勝負みたいなところがあるのも自分に合ってるし、制作には割ったり切ったり磨いたりと、長い時間がかかるのが石の作品ですよね。そういったところが石の魅力であって、自分の性格、制作にすごく合っていた。

コンセプトは、種の形を作っているんです。種の形や萌芽、芽が出た時の形とかを作っているんですけど、もともとボリュームのあるもの、生命のあるもので、滑らかな形を作りたいと思っていまして、どんな風に柔らかいタッチで石にメリハリ感を出そうかなぁ、なんてことを考えながら制作しています。

石はやっぱり一つとして同じものが無いので、常に石を見て作っていること、手で触りながら凹凸感を確認しながら、手磨きにこだわって磨いています」。

吉田さんの大理石を使った「芽吹きのヴィーナス」は準会員賞受賞

 

渡部さん
「石の魅力は全部その中に入っているってことじゃないでしょうか。素材そのものが全部自然なりというか、美しさもそうですけど、歴史も全部入り込んでいるって感じです。
もちろん素材の持っている硬さとか質感もそうですけど、私の今回彫った大理石なんかは、本当に歴史の堆積などが目に見えて分かりやすくなっている石なんで、結構こういった歴史・時間を感じることができる石が好きです。軟らかさが違ったりして、彫りづらいんですけど、模様のある石が好きで、よく使ったりしています。

石は金沢美大2年生の時から彫っていますが、木彫や塑像などひと通り経験して、石が一番言う事を聞かない素材だったので、逆に印象に残ったというか、もっとやってみたいなぁっていう想いがあって、それからずっぽりハマっていったって感じです。他の素材には脇目も振らずにやっていますが、いまだに言う事を聞かない素材ですね。

私は自然の中の流れというか、対流みたいなものをコンセプトにやっていて、柔らかい形というか、有機的な表現を目指してやっています。内包しているエネルギーの中の流動みたいなものをイメージしながら、自分で考えて制作しています。

今回の作品は、石自体が模様とか波紋って感じに受け取れて、派手な感じだったので、シンプルな形にしてみました。私は、いつも尖らせたり穴とか空けたりしているのですが、今回の作品は極力そういった場所を少なくして、自然の流れ、生命の流れみたいなものを表現しようかなと思って制作しました」。

渡部さんの大理石を使った「wavy seed」

 

吉田さん、渡部さん、貴重なお話をありがとうございました