銘店“石屋”シリーズ 渡辺石材店(愛知県岡崎市)
お客様に妥協させることなく、想いを汲み取ったお墓づくりを大切にしています。
〝石都〟と呼ばれる岡崎の「石の公園団地」内にあり、創業から長い歴史を持つ渡辺石材店。現在は四代目の渡辺大資さんが亡き父の後を継ぎ、家族とお店を営んでいます。今回はそんな渡辺大資さんから、お墓づくりに込める想いなどについてお話をうかがいました。

渡辺大資さん(平成元年生まれ)
石材施工1級技能士や伝統工芸士の資格に加え、職業訓練指導員の免許も持っており、若手の石工たちが学ぶ岡崎技術工学院で講師を務めたことも。また、同業の仲間4人と定期的に一般向けのイベントに出展するなどし、石の魅力を広める活動にも力を入れています。
―渡辺石材店はいつ頃に創業したのですか?
渡辺 初代はぼくの曽祖父で、戦後の昭和22年から石材の加工屋を始めたという記録が残っているのですが、実際はそれよりも前から灯籠などをつくっていたみたいです。それで二代目の祖父の時代、昭和50年頃に「石の公園団地」に移ってきて、いろいろな石材加工用の機械を入れ始めたそうです。そこから、最初は灯籠づくりをメインにしていたのですが、だんだんとお墓のほうにシフトしていった。おおよその歴史はそんな感じだったと聞いています。
―渡辺さん自身は何代目になるんですか?
渡辺 ぼくは四代目です。ただ、若い頃は石屋を継ごうとは考えていなくて、進学した大学では情報系の学部でコンピューターのことなどを学んでいました。
ところがちょうどその頃、父にガンが見つかって、最初は「もうお店をたたもうか」という話にまでなったんです。でも工場には機械もいろいろありますし、まだ現役で動いているのにもったいない。だから、ぼくがあとを継ごうと。それで最初は、同じ石の公園団地内の石材店で3年ほど住み込みで修業させてもらい、いろいろな加工技術などを身に付けてから、家業に入りました。

―その後、大きな分岐点などはありましたか?
渡辺 父が亡くなってしまったことが、一番の分岐点になったと思います。父が元気だった頃は、叔父も働いていたんですけれど、まずその叔父が退職し、次に父も亡くなって、最初は3人でやっていたのが結局1人だけになってしまいました。経理は母が手伝ってくれていますけど、そのほかのことは全部自分でやらなければならなくなって、最初のうちはすごく大変でしたね。
―そんな大変な時期を、どうやって乗り越えてきたんですか?
渡辺 父や祖父の時代から繋がりのあるお客様も多いですから、やはりそういった歴史の長さに助けられた部分は大きいと思います。
あと、うちは石の加工機械が揃っているので、同業者向けにやっている加工卸しの仕事も多いのですが、父が亡くなった後も、継続してご依頼をいただくことができている。急ぎの納期などにも、できるだけ柔軟に対応していますし、「困ったときの渡辺くん」みたいに思ってもらえているのかなと。
―それは裏を返せば、同業者からも認められるぐらいの品質をクリアしているということですね。
―では、ここでプライベートについてもうかがいます。趣味などはありますか?
渡辺 ぼくは車が好きです。比較的簡単な整備やドライブ。たまにサーキットやジムカーナ。ちなみに車の塗装も、「これは石の加工技術を応用できるな」と思ったので自分で塗りました。
あとはカメラで子どもたちや風景などを撮ったり、ガンプラをつくったり、最近はロードバイク(ロードレース用の自転車)も始めたばかりです。それに漫画やアニメも大好きで、「ワンピース」は小学生の頃からずっと愛読しています(笑)。
―モノづくりがお好きなんですね。それはお墓づくりにも通じる部分があるのでしょうか?
渡辺 とくにお墓は長く残るものですから、それこそ、お客様がいつでもお墓参りに行きたくなるような、いいものをつくりたいと思っています。
そのうえでお客様には、できるだけたくさんの選択肢を提示するように努めています。最初からこちらで選択肢をしぼってしまうと、どうしても妥協が生じてしまいますからね。お客様には、いつも「お墓のかたちや文字も柔軟に対応できます」ということをお伝えしていますが、できるだけお客様の想いに寄り添っていきたいと考えています。

石の加工技術を活かして多彩な石製品づくりに取り組んでいる
―渡辺さんは、お墓を建てる意義についてどのように考えていますか?
渡辺 今は樹木葬など、いろいろな選択肢がありますけど、やっぱりご先祖に報告できる場所、心を落ち着けられるような場所というのは、あったほうがいいのではないかなと思っています。
あとは金銭的に見ても、長い目で見れば、お墓のほうが負担が少ないのではないでしょうか。たとえば散骨なんかは、その度ごとに費用が発生しますし、お寺の永代供養なども決して安い金額ではありません。そう考えると、たとえ最初に、ある程度の出費があろうと、その後も子孫は増え続けていくわけですから、最終的にはお墓を持っていたほうがリーズナブルになるケースも多くあると思うんです。
―では最後に、今後の目標を教えてください。
渡辺 父がおととしに亡くなって、それからの約2年で、父の仕事はだいたい自分でもできるようになったと思います。とはいえ、今のところはお墓と灯籠がつくれるくらいなので、今後は彫刻づくりにも挑戦して、石のことなら何でもできるような石屋さんになりたいです。
ただ、お墓を壊す仕事は、たとえ自分がつくったお墓でなくても、あんまりやりたくありません。苦労してつくり上げた人の気持ちがわかるから、どうしても心が痛むんです。だから、できれば、石に関することの中でも、とくに〝つくる〟ほうをがんばっていきたいと思っています。

世界に一つだけの墓石づくりも
渡辺石材店
所在地:愛知県岡崎市稲熊町赤松10-2
TEL:0564-24-6760/FAX:0564-25-5020
ホームページ:https://watanabesekizaiten.jimdofree.com/
いしマガ取材メモ
今回の取材では、最後に母親の貴子さんからもお話をうかがうことができました。3代目である夫が亡くなり、息子の大資さんが家業を継ぐと決断したときのことを振り返り、「最初はすごく不安でした」と貴子さん。しかし、一生懸命に取り組む姿を見続けてきて、「あれからずいぶん頼もしくなった」と笑みを浮かべます。「最初はきれいで細かった指も、あんなにごつくなって。もちろん、まだまだ未熟なことはあると思いますけど、今はできるだけ長くこの仕事を続けていってもらいたいと思っています」
家族で大切な家業を守り続けている渡辺石材店。家族経営ならではのアットホームな雰囲気も大きな魅力です。


