この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京都・京橋にありますギャルリー東京ユマニテで開催された岡本敦生さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

――石彫家岡本敦生さんが考える「石の魅力」とは?

「石の魅力は僕にとっては地球そのもの、という点ですね。基本的に、石が他の素材と違うところは、金属にしたって何にしたって、人間が素材として作り出したものじゃないですか。
でも、石っていうのは我々が手にした時っていうのは素材じゃないんですよ。まだ地球なんですよ。地球そのものがゴロンとそこにあるっていう、地球の表皮がそこに転がっているっていう。そういった素材じゃないものを、どう自分の素材にしていくか。地球そのものっていうのを、どうやって自分の中に、自分の形に取り入れていくのかっていうのを考えています。

また、石の冷たいまでに無機的なところっていうのが好きなんですよ。なんとなく人間を拒否するところがあるじゃないですか。「お前ら若造が何考えてんだ、この野郎」みたいなところがあるじゃないですか(笑)。
向こうは何十万年も生きている訳で、俺なんかせいぜい数十年しか生きてないのが石に冷たくされるわけ。それが非常に魅力なんですね。石の冷たい魅力にとりつかれちゃっていますが、最初考えていたことは、とにかくどうやって素材にしていくかってことです。

作品は、まず最初に原石にドリルで穴を開けるんです。空けた途中で一度止めちゃうんだけど、止めたところに向けて次の穴を違う角度から開けていくんです。原石の中で穴をつなげていく、全ての穴がつながっていくように掘っていきます。穴を開け終わったら、今度はその穴を原石から彫り出していくというコンセプトです。
2008年くらいから始めたドリルの穴の仕事っていうのを、いまだにずっとやっていて、石に穴を開けて、それが全てつながることによって空気が通いはじめるというか、石が呼吸をはじめるっていう雰囲気がすごくしてたんです。

今までは玉石に穴を開けて円柱を彫り出すという形を作っていたんですが、今回は四角い石を使った作品を制作しました。穴を掘るっていうのは何かを掘り出したいから掘っていく訳なんですが、でも僕の場合は、穴を彫る訳だから、彫り出す目的が空洞である、目的・対象物が空洞だっていうのが、すごくお洒落だなぁと思っています。

白御影石を使った「fossil-14-2」、「fossil-14-1」と岡本さん

2008年のギャルリー東京ユマニテとギャラリー山口との同時開催でやった個展の時から穴シリーズになったんですが、2009年にイギリスにシンポジウムに行った時、エジンバラの空港の工事現場に玉石が見えた。「これ、欲しい」と言ったら「持っていっていいよ」と言われ、エジンバラの美術大学に持って行って、さぁ何作るか?って考えた時に、イギリスでカッターや何やら調達するのは大変だから、穴だけで良いじゃんと思って、玉石にとにかく穴を開けた。

真ん中に向けて穴を開けて全ての穴がつながると不思議、息するんだよ。玉石が呼吸をはじめるの。コーッコーッって空気が通っていて、これは面白いこれで作品になるわって思って、その時は2点作って時間が余ったから、今度は穴の周りを円柱にして彫ってみようと。そのコンセプトが私にとって非常に新鮮だった。穴を発掘するっていう不思議さっていうのが自分の中で面白かったので、それからこういう仕事にガーっと入っていっちゃったんです。

原石をお金出して買ってるから、穴がつながらなかったらアウト。それだけはものすごく神経を使いました。
最初の段階でこういった形にしようといった正確なプランニングやエスキースがある訳じゃないんですよ。あったって、その通りにいかないから。最近そういったアンビバレントな面白さが楽しくて、呼吸する石fossil(化石)シリーズを作っています。
展覧会自体のタイトルはエクスカベーション、発掘っていう意味のタイトルをつけています」。