この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・中目黒にあります現代彫刻美術館で開催された「石彫の現況2015」で山手麻起子さん、大間光記さんにお話を聞かせてもらいました。

――石彫家 山手麻起子さん、大間光記さんが考える「石の魅力」とは?

山手さん
「石の魅力は教えてくれることが多いこと、教わることが多いことです。私は一般の大学を卒業した後に、働きながら武蔵野美術学園という社会人の方が沢山いらしている学校に行って、彫刻を勉強したことを機に、2009年頃から石で制作を続けています。

私の両親は美術をやることに対して反対だったので、やりたくてもすんなりと美大に行かれた方とは違って、やれない時期が非常に長かった。だから私にとっては作品を作れること、石が彫れることが喜びだったんです。
作れれば私にとっては十分なので、それ以外は何もないって感じです。

作品は大理石で貝と花を融合したような作品を制作しています。貝は海の中にいるもので、花は花束など感謝の気持ちを表すものじゃないですか。それで生命の源みたいなものに感謝の気持ちを表すことを表現しようと思って制作しています。

以前はFRPで風とか波を作っていたのですが、6年前から今の貝と花を融合した『貝に咲く』っていう作品名のシリーズになっています。今回はサザエなんですが、二枚貝にチューリップが咲いているような作品もあります」。

アメリカ、コロラド産大理石を使った「貝に咲く」と山手さん

 

大間さん
「石の魅力は自分が絶えて、死んじゃってからも、石は残ったりするっていう圧倒的な力強さに魅力を感じますし、地球の骨なんじゃないかなぁと思うような感覚が凄く面白いです。自分が立っている所の下に石は埋まっているので、ただの想像なんですが、地球の骨のような感じがします。
あとは彫っている時に、だんだん形が生まれてくる感じ。木と同様にカービングって言うんですけど、ちょっとずつちょっとずつ形になっていく過程が僕は凄く面白く感じています。

作品はノミとハンマーで彫る手仕事なんですが、僕の感覚のなかでは手で彫るっていうのが良いってことではないんです。石を彫るなかで、手彫りは良いって感覚ってあると思うんですけど、僕は痕跡とか痕跡を集めた集跡とか、そういったことに興味があって、それで手で彫るっていう作業を選んでいます。だから日本の伝統工芸的な手仕事=良い仕事っていうことからの手彫りじゃなくて、行為とかを大切にするうえでの手彫りっていうことを考えて作品を作っています。

粗い所っていうのは、石を彫った時に自分が思いがけないように彫れることがあるじゃないですか。どういうように彫れるか分からない感覚が時にはあって、それが僕は凄く面白く感じています。
今回の作品のモコモコとした所は、粗く石が出て来た表情に対して、僕がどうこの石と接するかってことを考えながらこういった形を決めていくって感じです。意図せず粗く彫れたって所を大事にしながら、自分と石の関係っていう立場で作品を作っています。

だからある程度は形をこういうフォルムで、こういう粗さでっていうのは決めるんですけど、粗く彫ったりセリ矢で割ったりしてから、石の割れた所の表情の面白さみたいな所を出してから、さぁどうしようかなといった制作の仕方を最近はやっています。

石の主張と自分の主張を足しながら作品にしています。作品名のビギニングは自分が作品を始める時の始め方っていう意味や、ここから始まって成長していく核となるものといった意味でこの作品名を付けました」。

アンゴラブラックを使った「a beginning」と大間さん