彫刻家に聞く「石の魅力とは」vol.27(明田一久氏)

この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は横浜髙島屋で開催された明田一久さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

「石の魅力は天然素材であるということ。屋外で耐久性を持っていて、雨風にさらされても大丈夫なところ。触って冷たさもありながら温かさがあるというか、自分の作品には温かさを出したいなっていう想いがあるので、そういったところが石の魅力ですかね。
黒御影をよく使っていますが、黒い石の魅力は磨くと黒くなるし、抑えた磨きにすると艶消しになってグレーっぽい色になったり、叩いたら白くなって白黒で表現ができる楽しさがありますね。

石を始めたきっかけは、大阪芸大の在学中に実習で石を彫ったのですが、扱いづらくて、よくトウフと言われる手作業で四角にする作業も思いどおりに出来なくて、石がえぐれてしまいました。その時の想いとしては、石は騒音や粉塵などの問題から大学を卒業してからはもうできないだろうなと思っていました。
それでどうせ苦手で、今後できないのなら石を在学中にやっておこうといった気持ちでした。それから大学の選択で金属と石のどっちをとるかで悩んで、苦手な方の石を選択しました。
でも、選択してからは扱いづらいぶん面白いみたいなものが背後に感じられて。未知のものという感じだったので、色々知りたいといった感じもありました。それから石にハマっちゃったって感じですね。

横浜髙島屋の個展会場と明田さん

大学では鉄ノミを使っていたので、夕方に焼きを入れてノミを作って、次の日に朝から石を彫るといった毎日でした。ノミを作るのは下手だったので、破片が顔や腕に刺さったりして結構ケガもしました。
作品は、学生の頃はシンプルな人体を彫っていましたが、卒業制作の時に割り戻しの作業で失敗してしまい、違う作品にしなければいけない状態になってしまったんです。
悩んだ結果、幼稚園の頃に好きで図工の時間等によくモチーフとして作っていたペンギンの形が出てきたんです。大学の卒業制作で作ったペンギンから作風が変わっていって、ペンギンをモチーフにして割り戻しで作った「南極島シリーズ」という代表作が生まれ、今の作品につながっているといった感じです。
作品のコンセプトは直接触れてもらい思わずプッと笑ってしまうような、ココロの何処かをくすぐるような、そんな作品を作り続けていきたいと思っています。ギャグを交えながら面白いタイトルを考えたり、私はバイクが趣味なんですが、自分の趣味や興味があることを作品の中に取り入れて、作品の面白さを倍増させていければいいなと思っています。

黒御影石、真鍮を使った「TONOSAMAライダー」

2年くらい前から真鍮と黒御影石を組み合わせているのですが、真鍮と石との融合の面白さを伝えていきたいなとも思っています。真鍮は昆虫等の細い部分を表現するのに使っています。今まで金属をずっと使いたいといった思いがあったので、上手く石と融合できたかなって思っています。
今までは黒御影に磨きと彫った部分でモノトーンの世界を作っていたって感じでしたが、いろんな色を付けてみたいといった願望もあったので、最近はポイントで部分的に色を使えるところは使って、作品の中に取り入れています。
色付けは漆用の顔料がありまして、アクリル系のクリア塗料に溶かして塗っています。最近はつばめのスワローシリーズや台座を道路にした道路シリーズを作っています。台座なんですけど風景というか、空間をイメージさせるものとして制作しています」。