この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・六本木にあります国立新美術館で開催された、第90回国展で、藤川健さん、西村大喜さんにお話を聞かせてもらいました。

藤川さん
「石の魅力は、石そのものが力を持っている素材だなってことと、変な話ですけど、私が死んでも作品は残るかなっていう、そういったところもあるかなって。
あとは加工の仕方によって、いろんな表情が出るところが魅力の一つだと思っています。石の素材の表情を残した部分と、自分が加工した部分をどうやってコラボしていくか。そういったことを考えながら制作しています。
岩手大学に入った時は絵画を専攻したのですが、2年生の時に彫塑科で、鉄だったりとか石だったりとか、いろんな素材で作品を作っているのを見て、こっちのほうが面白そうだなって思って。
そこから彫刻の方に移って、最初は人体をやっていました。そして鉄で作品を作って、立体のが合っているのかなって思って、面白いなと感じ、次に石を使わせてもらいました。粘土の素材も嫌いではなかったんですけど、自分には石材の方が合っているかなと思って石を続けてやっています。
作品は、空の雲の空間を切り取る力を表現したいなと思っています。ベースにあるのは雲や水で、そこから自分の中で好きな形を構成しています。空に浮かんでいる雲も、結局周りの温度とか風とか、そういったものに左右されて決まった形になっていると思うんですね。
自由なようで周りに左右されている。水も同じように、周りの環境に合わせて形が決まってきているところがあると思うんですけど、私の作品も、もともとあった石っていう形と、自分の作りたい形をどうやってすり合わせるかを楽しみながら制作しています。
作品は生命の断片という題名です。生きているものとかに、一気に近づくというのは難しいだろうなと思って。でも、少しずつ断片ならとらえられるだろうという想いもあって制作しています」。

藤川さんと作品「生命の断片 No.38」

 

西村さん
「石はやっぱり存在感っていうのが凄く強くて、それが僕の中では石材を選んでいる大きな理由の一つであり、もの凄く魅力を感じています。粘土と違ってカービングの作業しかないんですけど、そういうところの潔さっていうか、彫って形を作るっていうところが魅力的な工程です。
あと、朽ちないっていうところが僕が惹かれているポイントの一つだと思うんですけれども、何百年、何千年というレベルで作品がもつので、ノミを入れる時は、それくらい後に残っても恥ずかしくないような作品を作って、責任を持った良い作品が作れたらいいなって考えています。
いろんな素材を使ってきたんですが、今述べたような石材の魅力っていうのもありますし、自分が死んだ後も、沢山の鑑賞者がいることは、僕にとって大きく魅力として感じているところです。
コンセプトは植物を用いて生命感を豊かにする作品が多いんですけど、近年は人体的要素も取り入れて、より生命感を豊かにできれば良いかなと思っています。結構ぷっくらとした形が多かったんですが、近年ではそういった形の中に“しわ”を入れることによって、より膨らんでいるところを強調できるのかなって思って制作しています。
今後は『しわシリーズ』もメインとしては変えていって、部分としてしわを取り入れて、違うような展開をしていけたら楽しいかなって思っています」。

西村さんと作品「Come home」