この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・上野にありますいりや画廊で開催された渡辺治美さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

「私の場合は、彫刻を始めた時に粘土の作品を作っていたんですね。でも、石の作品を作るようになって、石のパワーというかエネルギーというか、そういったことに魅かれたんだと思います。
それと石って外で作りますよね。そういう解放感とか、そういうものが自分の肌に合っていたのかもしれないです。宇宙観っていうのかな?
今回使っている大理石なんかは貝とかが堆積されて出来た素材ですよね。でも、すごく時間をかけて、すごく大昔に出来たその石っていうのが、もう触っているだけで魅力的って思っちゃうんです。それが続ける要素になっていて、こんなに大変なのにやりたくなるんですよね(笑)。
いつもなんでかなって思うんだけど、石は素材として魅力があるんですよね。
大理石の魅力は手で加工がしやすいってところかな。作品は今のところ植物を作っているんですけど、根菜だったり根っこだったり、そういうものを作っています。
やっぱり自分が生きているっていう存在は、この大きな宇宙の中にあるっていう。それを表現するのに命や生命力の強さとか儚さとか、最終的にそういったものを表現したいなと思っているんです。
石って触っていると地球規模じゃなくて、宇宙を感じるんですね。それでそんな感じの作風になっているんですけど、勝手にそうやって作っています(笑)。

大学生の頃は粘土で作る塑像が多かったんです。教わった先生も具象の作家の先生で、石のエジプト彫刻やギリシャ彫刻の作品は好きだったんですが、私も具象の作品を作っていました。
石をやり出したのは卒業してからで、きっかけは今までの素材では表現しきれなかったってことですかね。塑像(人物)の作品を作って表現するのに、自分自身を素直に表現しきれなかった。そういったところがあったので、石に巡り合ってからは解放されたように作るのが楽しくなったんです。
それで、一時期は石で胴体を作って、手とか足、首などは塑像で作って、ブロンズにして組み合わせて作品を作っていました。それから人物から離れまして、自分で畑をやってみたら、根菜類の生命力に感動しちゃいまして、それから野菜系のものを作るようになっちゃったんです。
人間で表現するよりもすごくパワーを感じる。ですから今回の作品は野菜がモチーフなんです。真ん中が大根で右側が人参で左側がかぶです。逆さになっている形にしたのは、宇宙的な空間にあったら逆さでも横になっていても成立するんじゃないかと思って。
それで、ちょっとロケットみたく見えたり、塔に見えたり、お墓のように見えたりと、いろんな見方をしてもらって構わないっていう感じ。そういうデザインで、自分の中では上にスッと伸びていく感じとか、ちょっと崇高な感じというか、宇宙に向かって伸びていくような、そういう気持ちも、ああいう作品には作っている時にあるんです。

渡辺さんの大理石を使った「japanese radish、carrot、radish」

この作品はrootっていうシリーズで、4年位前から作っています。ルートっていうと根だから、根本的なこととか、植物の根っことか、木の根っことか、根菜とか、そういうものが具体的な形ですけれども、根っていう根本的なものっていうのは、深く自分の人間の中の建前っていうか、考え方っていうか、そういう大切さを感じるテーマなんです。自分が存在するっていう、そういうところを終始考えたりしています。

私の作品ってあんまり日常的じゃないんですね。なんでこうやって存在してるんだろうみたいな、そういうところが気になっているんです。
石で作るようになってから考え方とか作風が変わってきてまして、全く抽象ってわけじゃないんですが、そういう根本的なものをおさえたうえで、自分の世界を作りたいなって思っています」。