この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・銀座にあります養清堂画廊で開催された菅原二郎さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

「僕ら学生の頃は石がいちばん形を作るのに困難な素材だというふうに言われていたのね。その石を、なんとか自分が思うように表現できるようになりたいなと思って石彫を始めたわけなんです。
僕の作品は小さいものなんかは石膏でやればよっぽど楽なんだけど、全部石でやってる、バカみたいにね(笑)。
それはやっぱり慣れ親しんだ素材っていうことなんじゃないかな。今まで何十年と石ばかりやっていたわけだから、いちばんとっかかりやすい素材だってことですかね。
他の素材だとできないことはないんだろうけど、なんというか、その素材の準備とか道具から考えたりするのがしっくりこないというか、めんどくさいというのか。だからいつも使っている素材のほうがやりやすい、というのがあるのかなって思っています。

昔はスウェーデンの黒を無垢ノミで叩いていました。タンガロイなんてなかった時代だから、毎日ノミを作って焼き入れして叩いてっていう、手彫りしかなかった時代だったからね。カンカンキンキン金属の音がするような石で、手はコッパが当たって血だらけになりながら叩いていました。
だからなんで石の素材を選ぶかっていうと、かつてはいちばん制御が難しい素材だったんですよ。そこに自分の体力と精神力で立ち向かう、みたいな部分があったんじゃないかな。ひたすらノミ、コヤスケ、両刃、トンボの世界でした。

やり始めた頃は、そういう困難な素材だということが魅力だったと思いますね。
その後、いろんな技術革新なんかがあって、タンガロイをはじめダイヤのカッターなどが普通に使えるようになってきて。それで、どんどん道具の面では自分が思うような形を作れるようになってきたんですよね。
そうなってくると今度は“石で何を表現しようか”っていうことになってくる。
つまり、昔みたいにノミだけでやるってことじゃなくなってきて、形はこうと決めたら、そういうふうな形はいくらでもできるんだけれども、僕が一番興味を持っているのは石の中側という作品。インサイドアウトという、四角い石を割って、割れた面をひっくり返すような作品をやってきたんだけれども、割る仕事っていうのは一瞬じゃないですか。それから偶然性が非常に入ってくる可能性がある。
そういうことを考えていくと今度は全くそれとは逆のこと、つまり全部自分でやっていかないとやれないようなことをやっていきたいなっていうふうに思い出してきて。
それで“内側の形”っていうシリーズの作品として、外側は四角で、その形をなるべく残しながら内側を彫っていって空間を作っていく。そして取っていくことによって量を作っていくというような仕事になっていったんです。

石灰石を使った「風の塔」

そういうふうな流れがあって、振り返ってみてみると、内側の形のシリーズにしろインサイドアウトにしろ、全部石の中だったところを引っ張り出しているっていうことなのかなって思っているんです。
今はそこからもだんだん少しずつ変化していって、風のシリーズみたいな感じで、石の中の命みたいなもの。外側は四角なんだけれども、その中でうごめいているものも表現していきたいなと思ったりしてやっています」。