この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・京橋にありますギャルリー東京ユマニテで開催された平野恵子さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

「私は石を始めてまだ3年目で、今の状態の経験からなんですけど、形だけで作品ということではなくて、それはもともと自分の作りたい形があって、それプラス石がもともと持っている石自体の魅力っていうか素材感っていうか、そういったものが合わさって一つの作品になっていくという感じがします。木や石にはそういった魅力があるのかなって思っています。

今回の作品は100番位の粗い番手で手磨きした状態なんですけれども、ここからさらに磨き込んでいくと、石が持っているパワーを石がどんどん発揮し始めるというか、石がパワーを放つっていうか、その感じが好きですね。
あとは作りながら石に導かれるところもあります。例えばノミで石をハツるじゃないですか。ハツっている時に石の魂っていったら変ですけど、石の持っている、やっぱり言い方としたら魂ですかね。石の魂と自分の魂、石の中核と自分の中核がハツっている時に響きあう感じがするんですよ。その感じが好きですね。
よく作家さんが石と対話しながら作るなんて言うじゃないですか。それって、こういうことなのかなって思いますね。

石はやっぱり硬いから簡単には形にならないところが大変ですね。磨くにしてもちょっとやそっとの力じゃ磨けないから大変です。でも大変だから面白い。簡単に出来ないその不自由さが逆に形を洗練してくれる。形が選ばれて作られていくっていう感じがありますね。素材が形を選ぶ。そういうのを今回の作品で体験出来ました。

もともと私は平面でイラストレーターをやっていて、立体は木を使ってハンドスカルプチャーという、手で触って鑑賞する小さな作品を作っていたんです。最初にそれを作って彫刻って面白いなって思いました。
石で作品を作ったのは、女子美術大学で石彫をやっている岡本敦生先生にお会いしたのが大きなきっかけなんですが、先生の授業を受けるようになって、だんだん石の魅力に気付いていったって感じですね。先生のそばで制作させていただいて、自分一人では気付けなかった石の魅力に自然と気付いていったんだと思います。

私のコンセプトは人に教えられたり大学で学んだり情報を得たりとか、外からのこうすべきみたいなものが何も無くて。まだ何も学ぶ前の原点の感覚に戻りたい、小学校の時の10歳位の時の抽象の感覚を頼りに作ろうっていう感じです。
昔、小学校の時の図工の時間に、発泡スチロールの板を電熱線で切るという授業があったんです。自由に作っていいと言われて抽象形を作ったんですね。他の子たちはチューリップとか船などを作っていたんですが、皆の作品と見比べた時に、私のは変わっている、異質だって思ったんですね。ただ、変わってるけど自分では良いんじゃないかって思っていたら、絵の上手い子が私の作品を褒めてくれて。その時にアートに芽生えたというか気付いた、そんなふうな瞬間だったんですね。

大理石を使った「原点」

今回の作品は、その小学校の時の初心に返りたいなと思って作りました。今回大きい作品を初めて作ってみて、改めて石は面白いなって思いました。小さいのを作っている時は形はどうなのかなって、そういったところに興味がいってしまっていたんですが、今回は石と体力勝負で格闘するって感じだったので、石の重さ、量感、素材感を楽しめたって感じです」。