この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・六本木にあります国立新美術館で開催された第80回新制作展で平田義之さん、柴田正徳さんにお話を聞かせてもらいました。

平田さん
「石は素材感と抵抗感が魅力的だなって思っています。東海大学の卒業制作の時に石の作品を作って、それからしばらくは木彫をやっていて、その後また石に戻り、それから15年くらい石を彫っています。
石に戻った理由は、木彫をやっていた頃は形が散らばってバランスで見せるような作品を作っていたんですが、ある時に塊で動きのあるような表現の作品を作りたいといった気持ちが芽生えてきた時に、石のほうが向いているし、存在感が強いんじゃないのかなと思ったんですね。
ですから石をやり出したきっかけは石の塊の中から動き出しそうな形を彫り出したいなってことが、もともとの出発点なんです。その仕事を10年くらい前にやってからずっと石ですね。

「動塊」っていうタイトルは僕の造語なんですけど、石の塊からウニュウニュっとねじれて動きそうな形を今回は彫り出しました。どの作品も動き出しそうな形っていうのをテーマにしてやっています」。

スウェーデン産黒御影石を使った平田さんの作品「動塊」

 

柴田さん
「石はクリーンですよね。清潔っていうことがまずあって、粘土や木には無い抵抗が石は良いんですよね。自分には合っていると思っています。
硬さとか重さとかも自分の体に染み付いているから、手順も頭の中で組み立てられていて、あんまりめんどくさくないって感じで作れちゃうんですよね。重たいこととか硬いこととか、あとは割れた時の感触とか、そういったことが自分のリズムに合っているんだと思います。
そして実は伝統的な技法っていうのが石は無いんですよね。石を扱う時って約束事ってありそうで無くて、常に最新の機械を使って制作していくっていうのが面白いなって最近は思っています。
昔は叩いて作っていたんだけれども、機械ができて利用され、その機械も10年くらい違うと今の機械とは全然違ってくる。石との向き合い方も違ってくるから、常に新しい方法、技法、考え方で制作できることが面白くて魅力なんじゃないかなと思っています。
木彫って1000年か2000年くらい前に刃物が出た時から、そんなに扱い方は変わらないと思うんですけれども、石は「その時代その時代の最先端の技術でやらなくちゃいけない」みたいなところがあるから、それをどんどん受け入れて新しいことに挑戦できるような素材だなと、そんな感じに最近やっと思えるようになってきました。
伝統的な素材ではあるけれども決して伝統的な技法に頼るといった感じではなく、そういったところを新鮮に感じつつ、石と向き合うようにしています。
昔はその時の道具だったら、重たいから、こういったことをやってはいけないんじゃないかとか、こうはできないんじゃないかといったこともあったんですが、今はその時その時の最先端な道具と考え方であれば色々なことができそうだなって思ったりしています。

作品は女の人をよく作っています。最近は顔を先に作って、それをあたかもお人形のように組み合わせていくんですけれど、今年の作品は街で見かけた女性が横縞模様の服を着ていたのを見て、いつかそんな服が石でできないかなと思っていたんです。

ライムストーン、黒御影石、大理石を使った柴田さんの作品「Stripe and Stripe」

そして、今年の作品でストライプを表現したかったんですが、石をはめて磨くとかではなく、もう少し違ったものとして表現できないかなと思い、ステンレスの板をはめ込んでみたんですけど、まぁこの作品も最近のマシンでないとできないのではないかなと思っています。
昔は黒御影ばっかりだったんですけど、最近は昔と違って手順を考えることも面白くなっちゃって。大理石やライムストーン等も使って、あんまり黒にこだわらないでやるようにしています。どれだけできるか分からないけれども、まだまだ面白いことが色々と毎日発見できそうだから最近はますます楽しいですよ」。