この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・御茶ノ水にありますギャラリーf分の1で開催された阿部靖道さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

「石は、天然の素材の中でも一番いろんな表情が出てくる素材かなって思っています。加工の仕方で全然違う表情が出てくるし、彫っている時の面白さ、完成した時の表情とかがすごくバリエーションがあるし、なかなか極められない世界だなって思っています。
ずっと石の作品を作っていて、よく他の素材は使わないのか、と聞かれることがあるのですが、自分の中では石から離れられないっていう、そんな感じでずっと彫ってますね。上手く言えませんが、飽きないっていうのが石の魅力ですね。

石を削ったり叩いたりっていう作業が楽しいです。でも、やっている時はマスクをして必死こいてやってるんで、そこまで楽しいって感じじゃないですけど(笑)。1日ある程度作業してひと段落して、う〜んってあれこれ考えながら作品を眺める時が一番楽しいですね。
石の欠点は、硬くて重くて融通が利かないって言う方がよくいますが、でもそこが逆に良いっていうか、その欠点になりがちなところを石の力、存在感という良さとして引き出したいなって思っています。

多摩美の時の素材選択の時は、わりと迷うことなく石に行きましたね。石の作品を作っていた中井延也先生の、生き様というか、姿勢が豪快な先生がいたんですね。先生の魅力もあったと思うんですけど、当時の石をやっている先輩方の勢いを見て、石っていいなぁって思ったんです。
石を動かしたりする時に人手がいるじゃないですか。そういった時に先輩方と協力して石を動かすのが楽しかったんです。

ラステンバーグを使った「LOOP」

作品は5年位前からやっている「ループ」っていうシリーズなんですけど、面がつながっているので、自分の中の気持ちとしては、世界のものは全部つながっているんだよっていう、人も自然も宇宙もみんな一つにつながっているっていうような、自然観・宇宙観みたいなものを形にしたいなっていう感じですね。
作品を作る時は、針金でなんとなくですが輪っかの形を決めていって、それを見ながらデッサンをして、それから作っていくって感じですね。ですから、やり始めてから、ここ機械が入らなくてどうしようなんてことがあります(笑)。もうちょっと作り方を考えてから始めれば良かったなんて思うこともありますね。

でも、そういったことも面白いところ。作り方はカッターで切ってから小さいカップで仕上げていきます。大理石等はピカピカに磨いても自分としては嫌な感じはしないんですけど、御影で磨きあげちゃうと、キューって小っちゃくなるような感じがして、少しザラっとフワっとした粗い感じに仕上げたほうがとけ込むのかなって思っています。
ただエッジの曲線っていうのは出来るだけ綺麗に見せたいと思っているので、カップの特性をうまく使って、回転を外側になるようにして、角を軽く跳ねさせて、欠けた線がエッジに出来るように気を付けながら制作しています。
今の作品なんて原石の形からすると作品にして残るのは2割くらい。あとはコッパになって土に返すというかアトリエの地面に返しているので、なんというか、感謝しつつっていうのも変ですけれども、石を大切に思いながら制作しています」。