この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・目黒にあります現代彫刻美術館で開催された石彫の現況2017で渡辺忍さんと原透さんにお話を聞かせてもらいました。

渡辺さん
「私の場合、彫刻を始めようと思った時に木彫をやりたいと思っていたんですね。北海道出身なので、北海道は石を彫るというよりも木彫の文化が浸透していると思っていましたし、親しみがあったので、彫刻というと木だと思っていたんです。
ところが、岩手大学に入って初めて石彫場に行って石を彫った時に、なかなか上手く彫れなくて、木と石の違い、同じ実材でもこんなに素材が違うものなのかと思いました。御影石や大理石もそうなんですけど、とにかく自然の、天然のそこに在ったものを自分が想った形に変えていこうとするんですが、なかなか上手くいかない。
でも、自分がやっただけ、自分が思っている以上に表現を助けてくれたり、魅せてくれたりする。最初は予想がつかない素材だなと思っていましたが、とても惹かれていきました。
それからは木も大学の素材実習でやるんですけど、自分で木を専門にやっていこうという感じではなく、石のほうに行ってしまいましたね。いまだに彫っていても、毎回思った通りにはならないし、思った以上の面白さ、例えば割れ肌と磨きの表面処理があって、組み合わせるとどういうものが出来るのかなと思ってやってみると、意外と面白いんだなって感じたりする。そういう意味でも石は魅力的な素材ですよね。
作風としては包まれた形というのをずっとやっていて、今までやっていた風呂敷包みとはちょっと違った、中身を見せつつふっくらとした形で、最近はシンメトリー(左右対称)な形で上に向かってシュッとした感じ。グチャグチャっとした形よりもスッとしたフォルムになればいいなって感じでやっています」。

本小松石を使った渡辺さんの作品「ささやかな楽しみ」

 

原さん
「石はとにかく時間が掛かって作られている素材なので、木や鉄とは時間のスケール感が違うよね。木は芽が出て、大木になって、朽ちて次の芽が生えてくる、というタイムサークルな訳で。石も火山で隆起して、石になって、地殻変動で地上に出てくる。このサークルが他の素材とは桁が違って何万年とか何千万年の世界なので、石は、そういう時間の蓄積を圧倒的に感じます。
その辺の石を彫っていても人間の歴史よりも古いなんてあたり前。この石が出来た時に人間はまだいないとか、そういったことを感じられることも魅力じゃないかなと思っています。
あとは耐候性ですね。10年前に作った作品を置いておいても、ちょっときれいにすると、時間のスケールがデカい素材なので、あんまり時間が経ったようにならないっていうのも良いかなって思います。
木の作品なんてかなり変化が起きちゃうじゃないですか。だからそういった永続性みたいな要素がかなりあるって感じかな。石はそこが良い所かなって思います。
あとプライベートなことがもう一つ。大学時代に金属、木、石、塑像と全部実習でやるんですが、生理的に受け付けない素材っていうのが人によってあるみたいで。どういうことを言っているかっていうと、僕は鉄が焦げたりする匂いが嫌なんですよ(笑)。臭いが独特じゃないですか。
石の硬さ、カッターの音が嫌いな人もいて、粉が嫌いな人は、まず石はやらないね。もう魅力どころじゃなくて生理的に受け付けないんだよね(笑)。
木はノミで叩いていても返ってこない、抵抗が無くて抜けてしまう感じが嫌だっていう人もいるし、逆にそれが良いんだよっていう人もいるんですよ。素材をいじる過程での硬さや軟らかさ、抵抗感、音とか臭いが生理的に好き嫌いがあるんですよね。だから作業が自分の感性に合っていない素材というのは長く使うのは難しいんじゃないのかな。僕にとっては石の作業の音とか臭いとか感覚が一番合ってたのかなって思っています。
作品は石の中に特異点、これはブラックホールと言い換えてもいいのかな。そのような特殊な点があったら、どういう造形的なことが起きるのかなという、非常に理屈っぽいテーマでやっています」。

スペイン産マリーナレッドを使った原さんの作品「特異点のある石12」