この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・六本木にあります国立新美術館で開催された第91回国展で菊地伸治さんと菅原睦さんにお話を聞かせてもらいました。

菊地さん
「石の魅力は朽ちない、朽ちていかない、絶対性に近いっていうのかな。本当は絶対性って無いんだけれども、石は朽ちないって感じがあるじゃないですか。木のように朽ちないし鉄のように錆びないし、そういった意味では時間を超えていく素材なのかなという魅力がありますね。
どうして石で作品を作っているかというと、石が一番思い通りにならなかった、自由がきかなかったっていう感じかな。造形大学の時には素材実習で木を彫ったり塑像をやったり、いろんなことをやるのですが、石以外はデッサン力のぶんだけ、どれも作れるんですよ。
例えば、人体ならモデルを見て自分の技量のぶんだけ作れるわけなんです。でも、石は思い通りに作れなかったんですよ。学生の頃はダイヤモンドカッターなんて使っていると先生に怒られちゃうから、鉄ノミなど昔の道具だけでの制作なんですね。こういう形を出したいと思って作っても、キズが入っちゃったり、ビシャンやノミの跡が星みたいに残ったりして、自分の思い通りの形がまず作れない。そのことが悔しくて、作れるようになりたい、石という素材をこなせるようになりたい、と思ったんです。
あと石は途中で引けなくなるじゃないですか。作り始めて欠けたの割れたのっていっても諦められないですよね。時間と労力をかけて、ここまでやってきたのに割れたぐらいじゃ諦められないっていう、そういった気持ち。石は削ってしまったらもう元に戻らないから気合いみたいなものが試される材料だなって思います。

コンセプトは永遠とか無限っていうことが好きです。あとは文明、古代文明とか人間の文明の歴史が時間と共に壊れていったような、いわゆる遺跡みたいなものがすごく好きで、今回の作品は丸の中にピラミッドの形を彫っています。横の線は水平線や地平線のイメージで丸の下はバベルの塔のイメージなんだけど、細かい部分を作るのは大変なので象徴的な単純化した形にしています。
虚仮(こけ)の一念岩をも通すってことわざが好きでね。それくらいのバカになってやるこんにゃろう、くり抜いてやるぞ、なんて思って石をくり抜いた作品を結構作ってますよ(笑)」。

稲田石を使った菊地さんの作品「Parallel Horizon」

 

菅原さん
「石自体の持っている素材の力であったりだとか、制作が終わった後に、その形状を長く保ってくれる。長い時間、見ることができるというのは素材としての魅力じゃないかなと思っています。
あとは彫っていく中でどういった形にしていくと石自体が生きていくか、石を素材として選んだ良さが伝わっていくかなど、加工しながら考えてやっていくところが楽しいなと思います。磨きの番手ひとつとっても色が変わりますし、作品全体の雰囲気も変わってきて、楽しいですよね。そういったところも石の魅力だと思っています。
また、石自体の加工は大変なので、ひとつずつ加工の手順を進めていったり、形を決めていく時の手応えだったりとか、磨きをかけていく中で石が見せてくれる素材の強さ、硬さであったりとか、重さ、輝きであったりとか、そういうのは他の素材では無い石の魅力だと思います。

コンセプトは最近の作品のタイトルが滴り(したたり)なんですが、水がポタポタ落ちるような形であったり、水のイメージを持ちながらやっているんですけど、長い時間のことであったりとか、長い時間をかけて何かをしていくようなイメージで今は作っています。
ただし、岩手出身なので、震災の津波のこと、その水のイメージが頭から離れられない時期があって、でも作品で津波とかって作りたくないと思っている中でも、どこかで自分の想いを外に出したいと思っていたので、それがこの作品になったのかなって思っています。なんとなくですが、長い時間のことであったりとかをイメージして、これから上手く伝えられるようにしたいなって感じでやっています」。

赤御影石を使った菅原さんの作品「滴り」