銘店“石屋”シリーズ 有限会社山秀石材 (埼玉県三郷市)

弊社の財産は人。社員一人ひとりからお客様まで、みんなに愛される会社であり続けたい。

1974年に創業された有限会社山秀石材は、墓地の紹介・墓石の販売・施工を中心とするお墓専門店として、地元の顧客から厚い信頼を得ています。同社二代目の社長を務める郡篤一郎さんと、施工現場の責任者を任されている郡大毅さんにお話をうかがいました。

二代目の郡 篤一郎さんと長男・郡 大毅さん親子

篤一郎さんは社長として会社全体のマネジメントを担当。大毅さんは現在、墓石工事の現場責任者として活躍しています。
同社の特徴は、「人(社員)は最大の資産である」という経営方針を通して、より良いお墓づくりを追求し続けていること。社員思いのアットホームな社風が大きな魅力でもあります。

 

御社創業の経緯を教えてください。

篤一郎 創業者である先代の社長(父)は、当初、不動産業を営んでいたのですが、あるとき、霊園の開発事業に携わることとなり、そのことがきっかけになったようです。当時は昭和末期の墓地・墓石ブームの時代。霊園関係の方々と仕事を進める中で、人との繋がりの大切さを感じられる墓石業という仕事に魅力を感じたのだと聞いています。
私自身は、学生の頃から墓地の草取りや、ご縁をいただいたご住職さんの送迎などをアルバイトとして手伝っていましたが、デザインの勉強をしていたため、当初は東京のデザイン会社に就職しました。そこで4年ほど編集デザインに携わり、仲間もできて、責任者としてやりがいのある日々を送っていたのですが、父が病気になって入退院を繰り返すようになり、長男として会社を継ぐことを決心しました。
当時の自分は、まだ24歳。お墓の仕事のことは何もわからない状態でしたが、年長の社員の方たちに助けてもらいながら、とにかくやり続けるしかありませんでした。それ以来30年間、いろいろな方々との出会いに恵まれたおかげで、ここまでやってこられたのだと感謝しています。

 

――大毅さんは、小学校から大学までずっと野球を続けられていたそうですね。

大毅 父には小学生のときに何度も甲子園へ連れて行ってもらったり、中学2年の頃からは、仕事の忙しい合間を縫って毎日のようにトレーニングに付き合ってくれたり、たくさん助けられました。今でも一番思い出に残っているのは中学3年の最後の大会。特大ホームランを打ってダイヤモンドを一周していたら、真っ先に立ち上がって拍手してくれている父の姿が目に入って、すごくジーンときたことをおぼえています。
高校は甲子園にも出場経験のある東京の二松学舎大学附属高等学校に進学しました。競争の激しいレギュラー争いの中、ポジションはおもにファーストで、打撃を買われ、4番や5番を任せていただき、多くの試合に出ることができました。
大学に進んでからは、さらに競争が激しく、レギュラーにはなれませんでしたけど、野球を通して得られた数多くの経験は、自分の性格や考え方の根っこの部分などの基盤をつくってくれたと思っています。

 

――大毅さんが石材業を継ごうと思った理由をおしえてください。

大毅 子どもの頃から好きな野球をずっと続けさせてもらいましたので、「自分にもやれることがあったら恩返しをしたい」という気持ちはずっと持っていました。ただ、外の世界も知りたいと思いましたので、大学を出てから2年ほどは電気工事士の仕事をしていたんです。それであるとき、専務をやっている母から「職人さんが辞めてしまいそうだ」と聞きまして、お世話になった電気工事の会社にも迷惑のかからないタイミングで家業へ入ることを決めました。
電気の仕事をしていたときは、みんなから「おやっさん」と呼ばれている80歳近くになる方から孫みたいにかわいがってもらい、職人のイロハをしっかりと叩き込んでいただきました。おやっさんから教えていただいたことは、今の仕事にも、ものすごく活かされていると思います。

 

――お二人が仕事をする上で大切にしていることは、どのようなことでしょうか?

篤一郎 弊社の一番の財産は、やはり人だと思っています。7年前に社屋を新築したとき、営業の方や職人さん、事務の方など、みんなの楽しそうな笑い声が聞こえてきたことがありました。そういう、みんなが笑い合える環境をつくっていくのが私の一番の目標です。そのためには働きやすい職場や、誰もが意見を言え、ヤル気が出る環境をつくっていかなくてはなりません。
あとは、一人ひとりの仕事にきちんと感謝の気持ちを表すことも必要です。例えば、墓石工事をしてくれている職人さんの仕事は、営業職みたいに数字で成果をはかることができません。ただし、当たり前ですが、社員それぞれが役割を果たして会社が成り立っていくもの。社員一人ひとりに対してしっかりと目を向けるようにし、ちゃんと評価して「見ているよ」というメッセージを伝えていくと共に、彼らが何を求めているかを知ること・理解することが大切だと思っています。

大毅 自分がいた高校の野球部は、最後のグラウンド整備を下級生ではなく、3年のレギュラーがやることになっていたんです。先輩方はきつい練習が終わったあとなのに、「お前らは先にあがれ」と。そのときの経験から、やはりどんなことも自分が率先してやらなくては、下の人たちも付いてきてくれないということを学びました。
そして、どんなときにも「やってもらって当たり前」という考え方ではなく、常に感謝の気持ちを忘れない自分でいたい。本当に自分は、野球によってものすごく成長させられたと思っています。

 

――最後に、お二人のこれからの抱負を教えてください。

篤一郎 自分たちが建てたものに手を合わせていただいたり、涙を流される方もいたりと、お墓をつくることには、ほかにはない尊さがあります。これからも社員全員で、そういう気持ちを大切にし、真摯に仕事に向き合っていきたいですね。
そして、経営とは人を動かすこと。そのためには、自らが規範となれるように、目標を定め、勉強し続けていかなければなりません。展示会や各種セミナーなど、いろいろなところへ足を運んだり、お寺さんなど様々な方々とお付き合いさせていただくことで、インプットを怠らず、仕事を成し遂げたいと思っています。

大毅 お墓づくりは、人生においてとても大切な場面のお手伝いをさせていただく仕事。はじめの頃は、現場でお墓をつくり上げることがやりがいになっていましたが、続けていくうちに、お墓の意味みたいなことも意識するようになってきました。
それに、父から学ぶことも多いです。どんなことも突き詰めて手を抜かないストイックな姿勢は、しっかりと見習っていきたいと思います。

篤一郎 時代がどれほど変化しようとも、弊社は人が最大の資産であることに変わりはありません。息子には、チームプレーを大切にしたり、状況を見ながら戦略を変えるなど、野球を通して幼いころから身につき、育んできたものを、これからもどんどん活かしていってもらいたいと思っています。

 

有限会社山秀石材

【主な業務内容】
墓石販売/墓所工事/霊園各宗派寺院墓地ご案内/改葬/墓地改修工事(メンテナンス)/仏具販売(お位牌等)/記念碑/石彫刻・石灯籠・キャラクター販売/寺社・仏閣工事/各種石材工事(設計・施工)など

埼玉県三郷市早稲田5ー8ー2
フリーダイヤル:0120ー44ー6017

いしマガ取材メモ

勤続年数が20年以上という営業担当者3名をはじめ、現在の社員数は15名。社員一人ひとりを大切にすると同時に、社員の見本となるために自分自身を高め続けていこうとする篤一郎さんの姿勢が、働きがいのある社風をつくっているのだと感じられました。ちなみに篤一郎さんも、中学と高校で陸上の長距離選手をやっていたというスポーツ経験者。結果を出すために自分でいろいろなことを調査・分析していた経験が、社会に出てからも大いに役立っているとのことでした。
大毅さんは現在も地元の野球チームやソフトボールチームなど複数のチームで活躍中。地元の商工会青年部などにも所属しており、「今ある会社の体制で、ほかに何か新しい取り組みが出来ないか、ということは常に考えるようにしています」ともおっしゃっていました。
このようなチャレンジ精神は、お二人のスポーツ経験から培われたものなのかもしれません。