銘店“石屋”シリーズ 石惣石材(愛知県武豊町)

お客さま一人ひとりの想いをかたちにしていきたい

愛知県の知多半島に店舗を構えている石惣石材。
明治創業の老舗で、現在は3代目の秀憲さんが、お客さまの気持ちに寄り添ったお墓づくりを大切にしています。そして奥様の美穂さんが、そんな秀憲さんをしっかりとサポート。まさに家族経営という言葉がふさわしい、とってもアットホームな石屋さんです。

 

――まずは石惣石材さんの歴史や得意分野を教えてください。

秀憲 創業は明治時代で、もともとは母方の祖父が始めた石材店なんです。父は最初に建設の仕事をしていたんですけれど、母の実家が石屋でしたので、それを継ぐことになりまして、今は私が継いでいるといった次第です。あと、得意分野といいますか、メインにしているのはお墓なんですが、ほかに建築系の石の仕事もやっています。

美穂 お墓をつくった方の住宅で、乱積みや玄関ポーチなどの仕事を請け負ったり、お庭の土木工事のようなことをやらせていただくこともありますね。

秀憲 そういった場合のデザインなども、できるだけお客さまの要望に耳を傾け、理想のものができるように努力しています。

 

――石惣石材さんは、ご夫婦で協力してお仕事されていることも特徴だと思います。

秀憲 結婚して35年を過ぎますが、子どもが小学生になった頃から、少しずつ手伝ってもらうようになったんです。

美穂 最初は「土を運んだりするときにトラックを運転してほしい」と言われまして、娘をトラックのベンチシートの真ん中に乗せて、3人で練習したこともありましたね。

秀憲 遠方に行くときは、2人でトラックに乗って、交代しながら夜中もずっと運転していくんです。九州からお墓を移設してきたり、一番遠いときなどは、北海道まで行ったこともありました。

美穂 ただ、必死に手伝っているのに、段取りが悪いと怒られることもあったりして。そういうときは、むかっとくることもあります(笑)。

秀憲 それを言われると弱いですね(笑)。ただ、本当によくやってくれていると思います。トラックの運転だけではなくて、接客だったり、施工現場に行って寸法を測ったり、高低差を見たり。「質問されたことに答えられないのがいや」という性分もあるみたいですね。

美穂 私なりにわかる範囲で説明すると、お客さまも安心してくださるんです。あと、私が接客しているあいだに、夫がその話を聞きながら墓石のCAD図面をつくって、すぐにお渡しするので、驚かれたりすることもありますよ(笑)。

 

―――仕事をする上でのこだわりはありますか?

秀憲 私たちが売りたいものを勧めるのではなく、お客さまの気持ちを大切にしたお墓づくりを心がけています。ですから、いろいろな資料や過去の建墓例などをお見せしながら、お客さまの想いを詳しく聞かせていただき、それをかたちにできるように努力しています。

美穂 主人は「前と同じものはつくりたくない、それは前につくった方たちにも失礼だ」とよく言っていますね。お客さまにとって、お墓は建ててから一生付き合っていくものですから、心から満足してもらいたいという気持ちが強いみたいです。それで、打ち合わせがすごく長くなってしまうこともあるんですが(笑)。

秀憲 一人のお客さまと20回くらい打ち合わせすることもありますね。でも、それくらいやってこそ、本当にオリジナルなものができると思っています。石に、大切にしていた帯の柄や庭に咲いている花の模様などを彫らせていただいたり。お客さまの故郷である鹿児島の桜島や、生前によく乗られていた愛車、お孫さんがおじいちゃんに向けて書いた「ありがとう」という文字を彫ったこともありました。

美穂 やっぱり、お墓参りに行くのが楽しみになるようなお墓をつくりたいですから。それで、そのお墓が代々大切にされていったら本当にうれしいです。

 

――ここで少しプライベートのことも聞かせてください。秀憲さんは車が趣味だとか?

秀憲 車は若い頃から好きですね。昔は1年半ごとに変えていた時期もありましたので、これまでに何十台も乗っています。ハイエースの中を改造してベッドをつくったり、お墓と同じで、自分で少しずつ手を加えていくのが楽しいんです。

美穂 このあたりでは誰も乗ってないような、バイザーとかシートデッキのついたトラックに乗っているんですよ(笑)。

秀憲 でもそれで、仕事に結びついたこともあるんです。ある土建屋の社長さんで、たまたまそういう車の好きな人がいて、「どうせお墓を頼むなら、同じ趣味の人に頼みたい」と。あと、お墓参りしているおばあちゃんに話しかけられたり。ちょっとした宣伝にもなっているんです。

美穂 あと、地域のお祭りも大好きなんですよ。山車が店の前を通るときは、店先にビールサーバーを置いて振る舞ったり、子どもたちと一緒に「たません」を焼いて配ったりしています(笑)。

 

――では最後に、仕事のやりがいと、これからの目標を聞かせてください。

秀憲 うれしいのは、いろいろ打ち合わせしてお墓が完成したときに、「思っていた以上のものができた」と言っていただけるときですね。「ありがとう」という言葉が一番の励みです。

美穂 私は、もっといろいろな展示会に行って、どんどん新しいことを吸収していきたいです。各地のストーンフェアなどに行くと、地元にいるだけでは浮かばないようなアイデアを思いつくときもあって、そういうときが楽しいですね。

秀憲 それから納骨にも力を入れています。大切なお骨を納めるためのお墓をつくらせていただいているものでもあり、納骨のときまで責任を持って対応したいと考えています。開眼法要の際には妻と2人で立ち会うようにし、お寺さんとお客さまの間に立って進行をサポートしたり。そこまでやり切って、一つの区切りになると考えています。

美穂 私も、お客さまの様子を見ながら最後のお手紙を書いてもらったり、「こうしたら喜ばれるかな?」ということは常に考えています。

秀憲 そして現在、岡崎の石材店へ修業に行っている息子(翔哉さん)が、いずれ帰ってきたときに、良好な状態で店を引き継げるようにしておきたいと思っています。

美穂 そうですね。これまでのお客さまもそのまま受け継いでもらって、うちが長い年月をかけて築いてきた信用を、次の代につないでいってもらいたいです。

 

石惣石材


所在地:愛知県知多郡武豊町堀割48-2
TEL:0569-73-1740 FAX:0569-73-5586

いしマガ取材メモ

奥様の美穂さんいわく、「社長は一見こわそうに見えるかもしれないけど、話してみるとすっごく気さくなので、なんでも気楽に聞いてあげてください」とのこと。
ご夫婦の仲の良さがうらやましいくらいです。よく展示会にも2人で行って、帰りの道中で「今度はお客様へこんな風に提案してみよう」など、今後の改善点やアイデアを熱心に話し合っているそうです。
同社のお墓づくりには、ご夫婦のそんなやりとりが活かされているのかもしれません。