楽しい石入門 12時間目「水で融点が下がらないと花崗岩は生まれない」

加熱することで水が出てくる!?

先生 今日は岩石と水をテーマにした3回目ですね。

記者 ハイ!先生、今回もよろしくお願いします!

先生 前回は、岩石の内部に含まれている酸素や水素が、水となって外部に出ていくまでの過程をいろいろとお話させていただいたと思います。

記者 ハイ。ちなみに先生、以前に、墓石をクリーニングしている際、バーナーを使って石を乾燥させていると、中から水が出てくることがあると聞いたことがあります。

先生 なるほど。たとえば1000℃など、すごく高温になるまで加熱すれば、そういうこともありうるかもしれませんね。
あと、それと少し似たお話だと思うのですが、蛇紋岩という岩石がありますよね。その欠片を電子レンジに入れて温めると、少しだけ軽くなることがあるんです。

記者 えっ、それはなぜなんですか?

先生 蛇紋岩の中に含まれている水素と酸素が、水になって出てくるからですよ。

記者 なるほど、そういったケースもあるんですね。ということは、電子レンジの扉を開けたら、石の下に水が溜まっていたりもするんですか?

先生 いえ、さすがにその水は蒸発しちゃっていますけどね(笑)。

記者 ちなみに先ほど、バーナーで加熱したら水が出てきたというお話をしましたが、とくに何もしなくて、墓石の中から水が出てくることってあるんですか?

先生 う~ん、そうですね。おそらく、人が生きているくらいの時間の単位では、ほとんどないのではないでしょうか。

 

水がなければ花崗岩は・・・!?

先生 さて。では最後に、水と花崗岩の関係について、ぜひとも皆さんに知っておいてもらいたいことをお話しましょうか。

記者 ハイ、ぜひ!

先生 実は花崗岩という岩石は、極端な言い方をすれば、水がないと生まれません。つまり、水と密接に結びついた岩石だともいえるのです。

記者 えっ、そうなんですか!?

先生 それを説明するためには、一つ具体的な例を挙げるとわかりやすいかもしれませんね。
というわけで、まずは地球の地下にあるマグマの融点が、仮に1500℃だとしましょうか。すると、そのマグマはやがて二酸化ケイ素の少ない岩石、すなわち玄武岩になることが多いんです。

記者 玄武岩…ああ、思い出しました!先生が以前の連載でおっしゃっていた、海底をつくっている岩石が、たしか玄武岩でしたよね。

先生 ええ、そのとおりです。
しかし、地下のプレート運動などによって堆積していた泥や海水が入り込んだり、さまざまな要因によって地下に水が運び込まれていくと、融点が下がってしまいます。
たとえばそうですね、1000℃に達しない温度でも溶けるようになる。すると、二酸化ケイ素が多く含まれた岩石になるんです。つまり、それこそが花崗岩なんですよ。

記者 な、なるほど…!水があることで、ほかの岩石になるはずだったものが、花崗岩になる。水と花崗岩には、そんな関係もあったんですね!

石の見本を使いながら石材新聞・記者に説明する乾先生

 

日本に花崗岩が多い理由とは

記者 じゃあまさに、いってみれば水と花崗岩は切っても切れない関係なんですね。

先生 そうですね。花崗岩がもともとどうやってできたのかを辿っていくと、そういった言い方もできると思います。それにそもそも、花崗岩が大量にできないと「大陸」というもの自体ができないわけですからね。

記者 確かに。

先生 まあ、そんなわけでして、ハワイみたいに地下に水があまり含まれない地域では、玄武岩ができやすい。
一方で日本は、前にもお話したことがあると思いますが、たくさんの水が地下に流れ込んでいく。なぜ日本に花崗岩が多いかというと、実はそういった理由が大きく関係しているんです。

記者 なるほど、そういうことなんですね!

先生 それに私たちのような学者の世界でも、岩石の中の水に注目されている方はけっこうたくさんいらっしゃるんですよ。

記者 へ~、そうなんですか。

先生 たとえば、溶岩の中に残っている鉱物には、水の気泡が残っていることもあるんです。それがどういう鉱物に多く入っているのかを調べたり。その結果から、火山が噴火したきっかけなどを明らかにすることができるかもしれないんです。

記者 なるほど~。先生、どうもありがとうございます!今日のお話のおかげで、なんだか水に対するイメージが大きく変わったような気がします!

先生 それはよかったです(笑)。では今日のところは、ひとまずこのあたりでおしまいにしましょうか。

記者 ハイ!先生、今回もすごく勉強になりました!

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