楽しい石入門 13時間目「岩石の元であるマグマとは?」

稲田石を調べた夏の研究集会

記者 先生、今回もよろしくお願いします!
今日はですね、岩石の元となっているマグマというものについて、あらためて詳しく解説していただきたいと思っているんです。

先生 なるほど。それは地質学の本質的な部分にも関わってくるお話ですね。

記者 とはいえ、まず本題に入る前に少しだけお聞きしたいことがありまして。なんでも最近、先生は稲田石について調べられたとか?

先生 ええ、そうなんです。十何人かの研究者が関わるプロジェクトに参加しているものですから。

記者 すごく気になります!その内容を簡単にお聞かせ願えますか。

先生 「変動帯の文化地質学」というお題で個々に研究を進めることになりまして、私は石材の研究の一つとして稲田石に関する調査を行なったんです。内容は、稲田石の産地がどのような過程を経て、産業としてのかたちが整えられていったのか?主に明治時代から関東大震災までの流れを扱いました。

記者 あ、関東大震災が起こった後に、稲田石が大量に使われたという話はどこかで聞いたことがあります!

先生 ええ、そうなんです。稲田石は、震災からの復興のために、市場に大量に出回った。それが定説なのですが、では当時の産地には、それだけの量の石を大量供給できる態勢が、実際にどの程度まで整っていたのか?資料を読み直したりして、そういうことをあらためて調べてみたんです。

 

ビッグバンから太陽系誕生まで

先生 さて。ではそろそろマグマについてのお話を始めていきましょうか。

記者 はい!それというのも、よく図鑑や学校の教科書などでは、まずマグマがあるという前提で書かれているんです。では、そのマグマというのは一体どうやってできたのか?そこの部分からさかのぼって聞きたいと思いまして・・・。

先生 それはとても面白いテーマだと思いますが、そうすると、最初に宇宙のビッグバンから始めないといけませんね。

記者 ビッグバンから!? なんだか、いきなり壮大な話になるんですね。

先生 ちなみにビッグバンの前に何があったかというと、何もなかったとしか言えないんですけれど(笑)、ともかくビッグバンが起こって、その後に素粒子ができた。つまり物質が出現したんです。それがすべての始まりで、そこから宇宙のチリというものが広がっていったんです。

記者 チリ!? といっても、それは僕らが言うところのチリやホコリとは違うんですよね?

先生 チリが何でできているかというと、たとえば水素原子とか。ただし、全部はわかっていません。ともかく、空間の中にチリがたくさんあって、チリとチリのあいだには、わずかながら重力が働くんです。そうすると、無数のチリが重力に引き寄せられて少しずつ集まってきます。
そして重力というものは、質量が増すことによって、どんどん大きくなっていく性質を持っていますから、より大きな重力が発生するようになり、さらに多くのチリが引き寄せられる。そうした繰り返しによって、やがて銀河系や太陽系が形づくられていった。一般的にはそのように言われているんです。

記者 なるほど~!

先生 もっともこれは、天文学が専門ではない人の理解ですけどね。ともかく太陽系で言いますと、一番多くの物質を集めた部分が太陽になります。そして次に、太陽の周りを回る軌道の中で、ある程度の速度を持ったチリが、太陽には落ち込まず、次々と集まっていって惑星になる。それが太陽系ができるまでの大まかな流れです。

ホワイトボードを使ってマグマ等を説明してくれる乾先生

 

最初の地球はマグマの海だった

先生 ちなみに宇宙の物質は、約99%が水素とヘリウム。太陽もほぼ水素原子でできています。しかし、太陽の外側にある地球や火星は岩石型惑星といって、宇宙の中の非常に少ない物質からできている。割合でいうと、宇宙全体の1%にも満たないくらいです。

記者 すごい!地球というのは、そんな低い確率の中で生まれた星なんですか!

先生 これは確率というよりも、太陽系の地球や火星などのある軌道に、そういった物質が集まりやすい条件がそろっていた。そういう言い方の方が適切だと思います。
そして地球ができたといわれる約46億年前は、中心から外側まで地球全体が、すべて熱かったと考えられています。地球の表面までが融けていて、まさにマグマの海だった。これは一般的にマグマオーシャンと呼ばれています。

記者 先生!そこがよくわかりません。なぜ、地球がそんなに熱かったんですか?

先生 それは先ほど申し上げました、チリとチリが集まっていく過程で発生するエネルギーが理由です。

記者 エネルギー・・・ですか?

先生 物質というのは、まず第一に動いていること(運動)、そして高いところにあること(位置)。主にこの二つによってエネルギーを持っています。しかし、ぶつかったり(運動が止まる)、あるいは地表に落ちたり(高さを失う)すると、そのエネルギーが熱となって発散されるんです。

記者 なるほど、そういうことですか!

先生 ちなみにマグマは、ケイ素やアルミニウム、鉄、マグネシウム、酸素、カルシウムなど、地球をつくっている物質すべての寄せ集めです。最初はそれらがすべて融け合っていて、そこから冷却が始まっていく。いってみれば、地球の歴史は冷却の歴史ともいえるんです。ただ、今回はこのあたりでおしまいみたいですね。

記者 あ、本当だ。いや~、とても面白いお話でしたので、終わるのもあっという間ですね!

先生 では、その冷却が始まってからの詳しいお話は次号に回しましょう。

記者 はい!先生、今回もありがとうございました!

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