山田真喜子の「イタリア石風景」Vol.7~イタリア広場にある「石造円形噴水」~

高い石工技術が発揮された街のシンボル
イタリア・フリウリ地区マニアーゴ町

イタリア・フリウリ地区にあるマニアーゴ町の石造円形噴水は、“イタリア広場”と呼ばれるこの広場のシンボル的な存在。井戸水は生活に欠かせない源泉として重宝され、このような井戸水を活用した石造円形噴水は各所でつくられてきました。

街のシンボルにもなっている石造円形噴水

山の麓にある、この広場までの流水は、古代ローマ時代における水路の技術が使われています。広場の美観を重視した360度形式の石造噴水は、観光スポットでもあり、東京・渋谷にあるハチ公像のように待ち合わせの場所にもなっています。市場が開かれる月曜日には、子供たちが石の階段横の斜面を滑り台のようにして遊んでいる姿も見られます。

石造円形噴水は観光スポットでもあり、待ち合わせの場所にもなっています。

この噴水は、150年ほど前までは人々の洗濯にも使われてきました。ここは、かつて羊飼いによる放牧の通過地でもあり、給水池としても使われていました。噴水の一階部分が水桶のつくりになっているのは、その当時、動物たちが飲み水として使っていたことを今に伝えています。

水桶のつくりになった噴水の一階部分

このフリウリ地区は1976年、マグニチュード7クラスの地震に見舞われ、この石造円形噴水も倒壊。1980年に修復されることとなり、中央部にある八角形のデザインは1579年当時のものに、また噴水中面の四面から出る蛇口部分は、中世に施されていたライオン風のレリーフ彫刻が再現されました。

蛇口部分は中世に施されていたライオン風のレリーフ彫刻を再現

石材はフリウリ地区にあるアヴィアーノなどの採石場から採れる堆積岩を使用。イタリアならではの高い石工技術が発揮された、この見事な石造作品は、地元の市民たちからも愛されている街のシンボルでもあります。