銘店“石屋”シリーズ  株式会社せきぐち(群馬県伊勢崎市)

お客様に喜んでいただけるのがうれしくて、この仕事をしています。

お墓の販売・施工だけでなく、「頼まれたら石に関するどんな仕事でも引き受けます」という群馬県伊勢崎市の株式会社せきぐち。今回は代表取締役を務める關口信行さんに、お墓づくりのやりがいや喜び、仕事をする上で大切にしていること、そしてお客さんに対する真摯な想いなどについて語っていただきました。

關口信行(せきぐちのぶゆき)さん
(昭和43年/群馬県生まれ)
父の仕事を手伝っているうちに、お墓を建てる仕事のおもしろさに目覚め、試行錯誤しながらお墓の施工や加工の技術を習得。その後、約10年を経て有限会社を設立し、株式会社へと移行した。近年はライブハウスの店長だったという前職の経験を活かし、地元で音楽イベントの運営にも携わっている。

 

――關口さんは、石屋さんになる前に音楽関係のお仕事をしていたそうですね。

 高校生のときから20歳まで、ロック系のライブハウスで店長を務めていました。そのあいだにコンサートの警備会社をつくったり、ライブハウスの数も増やすなど、いろいろなことをやっていましたね。ただ、「この仕事は20歳まで」と決めていましたので、後輩に譲ってから、父のやっていた土木や建て込みの仕事を手伝うようになったんです。
父は石の仕事が専門というわけではなかったので、石屋さんとしては自分が初代です。たまたま、お墓の現場の仕事を受けたときに、お客様から、とてもよくしていただき、終わったときには何度もすごく丁寧にお礼を言われたことがありまして。それで「こんなに感謝されて、そのうえ、お客様の末代にまで関わっていくことができる。これはとてもやりがいのある仕事だな」と感じたんです。
そこからですね、ほかの石屋さんを手伝いに行って勉強したり、加工も実際に目で見ておぼえたり。最初は無我夢中でしたが、あれからもう30年以上も、お墓を建てる仕事に携わらせてもらっています。

 

――現在のおもな仕事内容を教えてください。

關口 お墓の販売と施工がメインですけど、10年くらい前からは建築の石工事などもやっています。あとはお墓のまわりのブロックを直したり、庭先の石を扱ったり、お墓や石に付随することでしたら、お客様からのご要望次第でなんでもお引き受けしています。
このほかにも、お付き合いのあるお寺の檀家さんから頼まれて、農機具小屋の屋根を直したり、土間を打ったりしたこともありました。また、自分のところでつくったお墓を気に入ってくださったお客様から紹介されて、山梨の大月のあたりまで足を運んだことも。信用していただいたら、どこまででも行ってしまうというところはありますね(笑)。
とくに営業などはしていませんので、基本的にそういったお客様からの口コミや紹介でお仕事をいただくことが中心です。頼まれたことは損得勘定抜きで引き受けてしまうことも多いです。何より「ありがとう」って言ってもらえるのがうれしくて仕事をしている感覚が強いですね。

 

――プライベートで趣味などはありますか?

關口 普通に趣味といわれるものは何もないですね。ただ、2013年から地元の仲間と一緒にボランティアで「GBGB(G-Beat Gig Box)」という音楽イベントをやっていまして、それが唯一の趣味といえるかもしれません。
イベントをやる目的は、地元を盛り上げること。それに車椅子でも来場しやすいように工夫して、障がいを持っている方たちにも楽しんでいただくことを大切にしています。それは出演者に対しても同じ。過去には、生後1ヵ月で失明したにもかかわらず音楽の才能を開花させたミュージシャンの木下航志さんが出演したり、「ROGUE」というロックバンドのヴォーカルで、事故で半身不随になった奥野敦士さんが、このイベントで復活ライブを行なったこともありました。
音楽は障がいがあろうとなかろうと、そんなことには関係なく誰もが楽しめるもの。2020年はコロナの影響で「GBGB」も中止になりましたが、次の開催(2022年)が決まったので、またみんなに喜んでいただけるようにがんばっていきたいです。

 

――仕事をする上で大切にしていることはありますか?

關口 うちはお墓を決めてもらうまでの時間がだいたい決まっていて、まず初対面のときに、40分くらいかけていろんなことをご説明するんです。そして2回目は、実際にお墓のところに行ってお話をする。そういったやりとりのなかで、石の産地や仕入先、それに加工メーカーの取り組みなど、伝えられることはすべて正直にお話するようにしています。
その上で、最初に自分のほうからお客様のことを信用します。今は「まず最初に疑ってかかれ」って言う人も多い世の中ですが、そういったことはしたくないんです。まずこちらから信じるようにしないと、先に進むものも進みません。それは社員に対しても同様で、一人ひとりの家族も含めて、最初に全部を信じて物事を進めるようにしています。
そういう意味では、まず正直であること、そしてお客様を信用するということ。仕事をする上では、常にこの二つを大切にしています。

 

――では最後に、仕事のやりがいと今後の目標を教えてください。

關口 お墓って、先祖さまと会話をする場所ですよね。行ったら掃除をして、心のなかで思っていることを報告する。こういうことって先祖さまのためにも本人のためにもなると思うんです。
ですから、もっとも石屋冥利に尽きるのは、自分のこしらえたお墓にどれだけ数多く手を合わせてもらえるか。お客様にお墓を大切にしていただけることが、自分にとっての一番のやりがいだと思います。
今後の目標は、もちろん今までどおり、一生懸命に仕事をしていくことは当たり前ですが、できればこの業界をよくしていけるような取り組みを行なっていきたいと思っています。今はお墓離れといった言葉もよく聞くじゃないですか。そういうことも、一人ひとりの石屋さんがちゃんと自分の仕事に向き合っていけば、なくしていけるんじゃないかと感じています。
そして何よりも、今後も人のためになることをやっていきたい。その想いは、これからもずっと変わらないと思います。

株式会社せきぐち

所在地:群馬県伊勢崎市宮子町3524-134
TEL:0270-23-5626 FAX:0270-23-8681

いしマガ取材メモ

ご自身の代から石材の仕事を始め、今では地域からの厚い信頼を築き上げている關口さん。取材の中で印象的だったのは、「本音を知られてもいいんなら、嘘をつく必要ってないんですよ」という一言。本当のことをなんでも話す正直さと、頼まれたことをしっかりやり遂げようとする真面目な性格が、多くのお客さんを惹きつけているに違いありません。
さらに音楽イベントでたくさんの人たちに喜んでもらうためには、お金のかかる部分で自腹を切ってしまうような一面も。また、障がいを持っている方に対しての思いやりは、音楽イベントのときだけでなく、仕事の上でも同様でした。膝に痛みを抱える年配者が立ったままで拝めるようなお墓や、車椅子でも拝みやすいお墓など、お墓のバリアフリー化にも努めているそうです。