銘店“石屋”シリーズ  鶴田石材店(愛知県名古屋市)

国産材と国内加工の魅力を多くの方に知ってもらいたい。

地下鉄八事駅から徒歩数分、八事霊園のすぐ近くに店舗を構えている鶴田石材店。常により良いお墓づくりを追求・探求しながら、昭和初期の創業時より数多くの建墓実績を重ねてきています。同社の三代目・井上和広さんにお墓づくりのこだわりや大切にしていることなどを聞きました。

井上和広さん(昭和37年1月生まれ)
趣味はお墓を見に行くこと。平成7年に阪神淡路大震災が起こった後、いち早くお墓に耐震構造を取り入れるなど、より良いお墓づくりに繋がることは積極的に取り入れていく姿勢を大切にしている。

―まずは会社の歴史を教えてください。

井上 創業したのは昭和の初め頃だと聞いています。もともと初代の方は笠寺の出身だったのですが、八事霊園ができると聞いて、ここに店を構えたのが始まりだそうです。

―井上さんが店を継いだのはいつ頃でしょうか。

井上 ここはもともと妻の実家なんです。結婚したのは29歳のときで、妻は事務や現場の仕事などを手伝っていましたが、私自身はサラリーマンで別の職業に就いていました。
ただ、妻が妊娠してからも実家の仕事を手伝っていると聞き、それは少し心配だなと。そこで少しでも助けになればと思って、最初はサラリーマンをやりながら、週末だけ手伝うようになったんです。
そうして現場で作業しながら義父と話していると、子どもたちが3人とも女性なので、後を継ぐ人がいないと言うんですね。その話を聞きながら「自分の代で終わってしまうのは寂しいのかな」と感じました。私もずっとサラリーマンを続けるつもりはなかったこともあって、義父にお願いして、こちらの道で生きていこうと決めたんです。

―現在のおもな仕事内容はなんですか?

井上 メインはお墓づくりです。すぐ近くの八事霊園と、緑区のみどりが丘公園、あとは千種区の平和公園という3箇所の霊園で仕事をすることが多いですね。

―とくに大切にしていることはありますか?

井上 15年ほど前から、国産材の石を使った国内加工のお墓にこだわっています。私が働き出した当時は、普通に中国製品のお墓を売っていましたし、たとえ国産材でも加工は中国で行なうのが当たり前の状況でもありました。それで、あるとき「なぜ日本の石なのに、国外で加工しなくちゃいけないのか?」と思うようになって、いろいろ外に出て勉強するようになったんです。
そうしたら、国内でがんばって加工している石屋さん(加工メーカー)が想像以上に多いことに気付かされまして。それから、そういうメーカーさんにがんばってもらいたいという気持ちもあって、お客様にも積極的に勧めるようになりました。
やっぱりお客様にとっても、加工した人の顔がきちんと見えているほうが安心だと思いますしね。もちろん、中国加工のお墓を選ばれるお客様もいらっしゃいますが、そういう場合も、国内加工との違いなどは包み隠さず、すべて正直にお伝えするようにしています。

鶴田石材店が手がけた国産石材を使用した国内加工の墓石建立事例 ①

―プライベートで、趣味などがありましたら教えてください。

井上 若い頃はスキーが好きで、よく一人でも行っていましたが、今はなんでしょうね。しいてあげるとしたら、お墓の勉強でしょうか。
とくに加工について学んでいく中で、「叩き仕上げ(石工道具を使い、石の表面に細かい凹凸をつける仕上げ)」の美しさに興味を持つようになりました。一般的には石をツルツルに磨く「磨き加工」のお墓が当たり前になっていますけど、どちらを選んだほうがいいかは、石の種類によっても変わってくると思うんです。
とくに淡い色調の御影石などは、「叩き仕上げ」によって石本来の趣が出てきますからね。今は、そういった石の良さや特徴を活かしたお墓づくりを進めていきたいと考えています。
あとは、昔のお墓を見に行ったりするのも好きです。いろんなかたちがあって、本当に勉強になります。

―お墓をつくることのやりがいはなんですか?

井上 今はもう亡くなってしまいましたけれど、お墓について学ぶ勉強会を主宰していた小畠宏允先生という方がいらっしゃいまして、私もいろいろな勉強をさせていただきました。その先生が、あるとき「お墓があるからお参りをするのではなく、お墓参りするためにお墓をつくるんだ」と言われたことが、とても強く印象に残っています。
その言葉を聞いてからは、私自身の考え方も大きく変わりました。つまり、お参りをしてご先祖を供養することが大切なんですね。私はお墓を建てることで、そうした供養のお手伝いをさせていただいているようなもの。そこには大きなやりがいがあると感じています。
しかも仏教的な思想では、きちんと供養を行なえば、いいことが返ってくるそうです。それならば、供養のお手伝いをさせていただいている自分たちも良い行ないをしていることになる。仕事としてお金をいただきながら功徳を積めるなんて、こんなにありがたいことはありませんね。

―最後に今後の目標を教えてください。

井上 石屋として「こういう方向性で、こういうものを提案していこう」というものは確立できたと思いますので、あとはそれを継承してくれる人を育てていくことが、次のステップになるだろうと考えています。
幸いなことに、息子がこの仕事を継いでくれると言ってくれていますので、あとは少しでも早くお墓の勉強を始めてもらえればと思っています。私が外に出かけて勉強するようになったのは40代の後半からだったのですが、もしもそれより10年早く学ぶことを始めていたら、だいぶ違っていたと思います。
そういう意味でも、今すぐにでも勉強してもらいたい(笑)。ゆくゆくは、私が学んだことを息子に伝えていくのが、自分にとっての新たな目標になっていくだろうと思います。そして、地域になくてはならない、社会貢献のできる石屋であり続けたいです。

鶴田石材店

鶴田石材店が手がけた国産石材を使用した国内加工の墓石建立事例 ②

所在地:愛知県名古屋市昭和区広路町北石坂102
TEL:0120-309-148/FAX:052-831-3830
ホームページ:https://ishi-tsuruta.co.jp

いしマガ取材メモ

「好きでやっていますので、休みの日でも店は開けています」と話す井上さん。お客さんが来たら、話を聞いて、それぞれの人の想いに合わせておすすめのお墓を考えることが楽しいと。それに、積極的にいろいろなところへ出かけていって、お墓について勉強することも楽しいと話しており、まさに「お墓大好き石材店」という言葉がぴったりの方でした。
そのため、自分が建てたお墓の近くを通りがかったときは、よく立ち寄るそうです。そこで、きちんとお参りに来ている様子が伺えると、「建てさせてもらってよかった」とうれしくなり、反対にあまりお参りに来ていないお墓を見ると、さびしくなってしまうとか。そんなエピソードからも、お墓のことが大好きで仕方がないという人間性が伝わってきました。