銘店“石屋”シリーズ 有限会社丸吉 吉田石材(愛知県岡崎市)

鳥居もお墓も 様々なお客様の想いを大切にして全力を尽くします

鳥居を得意とする石材店として、日本全国のみならず、海外にも鳥居を納めた実績を持つ有限会社丸吉 吉田石材。現在は二代目である伝統工芸士の吉田秀徳さんが原石の調達から製品の加工・据え付けまでを行なっています。今回はそんな吉田さんに、会社の歴史や強み、鳥居やお墓づくりへのこだわりなどをお聞きしました。

吉田秀徳さん(昭和47年生まれ)
鳥居の製作を極めた父のもとで学んだ後、30代で会社の代表に。父のことを「とにかく真面目な人」と語り、「現在も全国各地の石屋さんと取引できているのは、長い時間をかけて父が繋がりを育んできてくれたおかげ」と感謝の言葉を口にします。

―まずは会社の歴史を教えてください。

吉田 創業者の父はもともと熊本の出身だったのですが、石の職人になりたくて、昭和34年に単身で岡崎へ出てきたんです。ただ、岡崎は石都と呼ばれるくらいですから、技術を身につけるには最適なのですが、他所から出てきた父には地盤がない。そこでいろいろ考えて、「なにか独自のものを」ということで、鳥居を専門にしたのだろうと思います。

吉田さん自身は、いつから石の業界に?

吉田 大学を出て、まずは会社のすぐ近くにある(有)磯貝彫刻さんで3年ほど石工になるための修業をさせていただきました。それで、鳥居に関することは、修業を終えて戻ってきてから、父に一つひとつ教えてもらいました。
ただ、自分が生まれた時は住んでいる家の下が工場でしたし、中学の頃から鳥居の据え付けで父を手伝ったりもしていましたから、石屋さんのことは、幼い頃からすごく身近に感じていましたね。
いずれにしましても、3年だけでも修業したことで、いわゆる〝そとの飯〟を食うことができた。そこで成長できたことは、いろいろあったと思います。

㈲丸吉 吉田石材が手がけた鳥居の施工例

ちなみに御社は、これまでにいくつぐらいの鳥居の仕事に携わってきたのですか?

吉田 うちが鳥居をやり始めたのは、45年ほど前になります。主に全国各地の石屋さんからご注文をいただくケースが多いのですが、神社や一般の方から直接、当社へご依頼いただくことも少なくありません。鳥居の仕事は新しいものを建てるだけでなく、古いものを直したり、ちょっと掃除したりするケースなどもあります。そういったものを含めると、だいたい3000基ぐらいじゃないでしょうか。

鳥居だけで3000基!? 以前はアメリカに納品したとも伺っていますし、それだけ御社が選ばれる理由はどこにあると思いますか?

吉田 うちは原石の見極め・仕入れから自社で行ない、その後の設計や加工もお客様の要望に合わせて対応することができます。
ただ、うちのように鳥居を専門にしていないところだと、たとえば設計を一つとっても、実際に図面を引く人って、加工や施工のことをよくわかっていないことも少なくないと思うんですよね。でも、うちの場合は、それぞれの意味をよく理解したうえで、全体のバランスなども考慮した図面を起こすことができる。その後の加工・施工なども含め、そういうワンストップの体制を確立している点が一番の強みだと思っています。

ここで少し趣向を変えまして、プライベートの趣味についても教えてください。

吉田 今はヘラブナ釣りにハマっています。もともとはブラックバスとかを釣っていたんですけど、あるとき石屋さんの青年部の先輩に連れていってもらったら、それがすごく面白くて。
ちなみにぼくの釣りは、全然じっとしていないんですよ。こっちでエサをいじったり、あっちでは浮きを変えてみたり、いろいろ工夫しながら常に動き回っているので、仕事をしているよりも疲れるんです(笑)。

吉田さん、ちなみに血液型はなんですか?

吉田 これがB型なんですけど、変に生真面目だったり、心配性だったりで、自分でも「あんまりB型らしくないな」と思ってます。時間にも几帳面で、常に約束の時間よりも早く到着するようにしていますしね。ただ、そういうところは、もしかしたら仕事の段取りなんかに上手く活かされているのかもしれません。

では、仕事でもっとも大切にしていることは?

吉田 これは父から学んだことですが、「常に2人以上のお客様がいると思え」と。卸の仕事の場合、まずはうちから製品を仕入れてくださる石屋さんがあって、さらにその先には、うちが卸した製品を購入してくださるお施主様がいるわけです。だからぼくたちは、そうしたいろいろなお客様の想いにしっかりと応えていかなくてはならない。その教えは今もずっと大切にしています。
それともう一つは、当社が扱うすべての製品を「自分の製品」だと思うこと。そして限られた条件の中で、少しでもよく見えるように努力していく。たとえば鳥居なら、どんな場所に、どんな方向で建てるのか。そういったことまでも全て考慮しながら加工や施工の作業を進めていくようにしています。
そして、それはもちろんお墓を建てる時も同じです。自分の宝物をつくっていくような感覚で、細かいところまで徹底的にこだわっています。。

そんな吉田さんにとって、石屋さんという仕事の一番の魅力はなんですか?

吉田 自分でものをつくっていく仕事ですから、単純に楽しいですよね。しかも、特別なことがなければ、自分のつくったものが未来永劫、形として残っていく。その一つひとつの仕事をやり遂げたときに得られる大きな達成感こそが、この仕事の魅力だと感じています。

では最後に、今後の目標を教えてください。

吉田 ぼくも50代になりましたので、そろそろ技術の継承についても考えていかなければならないなと思っています。
幸いにもこの岡崎の石屋さんの業界は、横のつながりが強くて、古くからの助け合いの心が残っているところ。県外からの研修生など若い人たちもいますから、父と私の二代にわたって築き上げてきた技術やノウハウを、そういうこれからの時代を担っていく人たちに伝えていきたいと考えています。

(有)丸吉 吉田石材

同社の工場には鳥居専門の加工機械が設置されている

鳥居の製作には加工機械を活かしながら手加工で仕上げる場面も少なくない

所在地:愛知県岡崎市上佐々木町中切67-4
TEL:0564-31-3260
ホームページ:http://maru-yoshi.net

いしマガ取材メモ

吉田さんは周りにいる人たちをすごく大切にするタイプ。2人のお子さんのことも大事にしていて、昔は仕事のついでに茨城や香川、岡山など、いろいろなところへ一緒に行っていたそうです。そして、それは同業の仲間に対しても同じで、お互いの仕事をサポートし合う機会も多く、「うちみたいな小さなところが残ってこられたのも仲間のおかげ」と笑顔を見せます。そんな発言からも、吉田さんのあたたかい人柄が伝わってきます。
たとえ、石やお墓に詳しくない方でも丁寧かつ真摯に接してくれるので、どんなことでも、まずはお気軽に相談してみてください。