楽しい石入門 5時間目「火山岩と深成岩の違い ②」

火山岩と深成岩の違い ~地質学の世界では 急冷も1年単位~

先生 さて今回は、火山岩と深成岩の違いについての2回目です。

記者 ハイ!今回もよろしくお願いします。ちなみに前回は、マグマが急冷されたことによって、無数の細かい結晶の固まりになっているものが火山岩。一方でマグマがゆっくりと冷えたことで、1つひとつの核が時間をかけて成長したものが深成岩であると解説していただきました。

先生 そうですね。マグマが冷えて固まるまでの時間の長さが、それぞれの違いを生み出しているんです。

記者 ところで急冷というのは、具体的にどれくらいの時間の長さを指しているんですか?

先生 それは溶岩の化学組成や厚み自体によっても違ってくるのですが、たとえば今もハワイで流れ続けている溶岩は薄くてさらさらしていますから、おそらく1年もかからずに冷えて玄武岩になるんじゃないかと思います。

記者 なんと1年近くもかかるんですか!急冷というからには、1日とか2日のお話なのかと思っていました…。

先生 日本に多い安山岩の溶岩は、もっと長いかもしれませんよ。溶岩の厚みが何十メートルという溶岩流もあって、そうすると中がどれくらいの熱さを持っているのかもわからないですからね。

記者 じゃあ、もう一方の深成岩は冷えるまでに一体どれほどの時間が経っているやら…。

先生 一例を挙げますと、瀬戸内海の産地で地上に出ている部分が、1億年前とか何千万年前といわれています。つまり、それよりは短い時間で冷え切ったということですね。

記者 1億年前…!

先生 地質学では100万年という単位で物事を考えていくんです。もっと新しい深成岩もありますから、実際は100万年か、もう少し短い時間で冷えるのだろうと思いますが、花崗岩の年齢としては、1千万年くらいだと新しい部類に入ります。ですから10年や20年といっても、地質学の考え方では、まさに一瞬ですね(笑)。

 

花崗岩と流紋岩はもともと同じマグマ

記者 じゃあ先生、先ほどハワイの玄武岩のお話が出ましたけど、仮にその元となっている溶岩がゆっくりと何千万年もかけて冷えたとしたら、違う石になってしまうこともあるんですか?

先生 ええ。具体的には、深成岩のうちの斑レイ岩という石になると思います。いわゆる黒みかげといわれる石は、すべてこの斑レイ岩ですね。

記者 ということは、玄武岩と斑レイ岩というのはもともと同じマグマから出来ている…?

先生 そうなんです。もっとも、マグマが地上に上がってくる過程で失われてしまうものもありますから、まったく同じではないですけどね。ただ極端なことを言えば、玄武岩を溶かしたものと、斑レイ岩を溶かしたものは、ほぼ同じになると思われます。

記者 すごい、そうなんですか!

先生 ちなみに墓石によく使われる花崗岩でいうと、同じマグマから出来ている火山岩は流紋岩です。

記者 えっ、まさか花崗岩と流紋岩が、もとを辿ると同じマグマから出来ていたとは…。

先生 あらためて考えてみると面白いですよね(笑)。マグマの化学組成はほぼ一緒でも、冷えるまでの時間によって違う石になってしまう。要はつくられる結晶の大きさが違っているだけなんです。

火山岩と深成岩の違いを説明する乾先生

 

花崗岩とH₂Oの不思議な関係

先生 ではここで、花崗岩の軽さについて少し触れてみたいと思います。

記者 えっ、花崗岩は石の中でも軽い部類に入るんですか?

先生 そうなんです。以前の連載で、花崗岩は大陸をつくっている石だとお話したのをおぼえていますか?

記者 ええ、もちろんです!

先生 あれは花崗岩の軽さも原因の1つなんです。つまり、重くて海底をつくっている玄武岩の上にあるから、地球の中に沈んでいかない。まるでいかだみたいに浮いているんです。

記者 そういう理由があったんですか!

先生 ちなみにハワイは、その重いはずの玄武岩でできている島なのですが、あれは厳密には大陸ではなく、たまたま海底が海面より上に顔を出しているだけ。現に西側の古い山々はだんだんと沈んでいっていますからね。

記者 なるほど…。ところで日本は花崗岩が多いと聞きますけど、あれも何か理由があるんですか?

先生 実は、花崗岩がどのようにできているのかに関しては、おおよそのところはわかっているんですけれど、まだ確かな定説というものはないんです。ただ、水が関係しているのは確かだと思いますよ。

記者 水…ですか。

先生 日本だけでなく、世界の中でも花崗岩が多いといわれる地域は、地中に水が入りやすいという共通の特徴があるんです。もちろん水といっても、鉱物に入っているH₂Oの成分という意味ですけどね。

記者 あ、いわゆる液体の水ではないと。

先生 そうなんです。そして地中、つまりマントルですね。そこに水が入ると、融点が下がるという現象がありまして。

記者 ちょ、ちょっと待ってください。融点が下がるというのは、具体的にどういうことを指しているんですか?

先生 つまり、それまでは溶けなかったものが溶けるようになるんです。たとえば1000度で溶けなかったものが800度で溶けるようになる。そのときに花崗岩ができやすくなると考えられているんです。

記者 なるほど~。ひとくちに花崗岩といっても、化学によって様々なことがわかってくるんですね。
先生、今日も面白いお話をありがとうございました!

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