墓石に刻む文字と言えば「○○家之墓」や「先祖代々之墓」、また「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」といった念仏や題目などが広く知られています。しかしながら、洋型墓石が普及していくにつれ、墓碑銘は大きな変化を遂げていきました。

和型墓石が中心だった時代から、洋型墓石が増えていく時代への移り変わりの中で、大きな特徴としてまず言えるのは、縦書きから横書きへの変化です。これにより、「之墓」が省略され、「○○家」とのみ刻むケースが増えていきました。

また、最近は表札を英文字で表記している例もよく見かけますが、墓碑銘にもその傾向が反映されてきています。例えば、「林家」ではなく「HAYASHI」と刻むスタイルです。そして、家名以外の言葉を刻む場合も数多く見られようになりました。

以前、洋型墓石の多い霊園で調査してみたところ、墓碑銘として家名を刻んでいる墓所は全体の7割程度で、残りの3割は施主が選んだ好きな言葉が墓碑銘として刻まれていました。特に多かったのが一文字と二文字の言葉で、「絆」「和」「愛」「心」「慈」「夢」「永遠」「悠久」などに人気があり、ほかに「やすらぎ」や「LOVE」「FOREVER」「FAMILY」といった墓碑銘などが見られました。

「南無妙法蓮華経」などの念仏や題目が減っているのは、最近の宗教意識の希薄化の傾向が反映されているのかもしれませんが、抽象的な言葉が増えてきたことの背景に、家意識の希薄化が背景にあると考えるのは早計だと言えるでしょう。「愛」や「絆」といった墓碑銘に見られるように、家族に対する想いは今も変わらず強くあるのではないでしょうか。

抽象的な言葉を墓碑銘として選んだ場合、家名はその下部にやや小さく刻まれるのが一般的ですが、両家の家名を刻んだ墓石を目にすることも多くなっています。これには核家族化や少子化といった時代背景がうかがわれます。一人っ子同士が結婚した場合などに、両家でひとつのお墓を共有するケースも増えており、そうした場合に、墓碑銘に抽象的な言葉を選ぶことが多いようです。

洋型墓石の墓碑銘の場合、言葉や書体のほかにレイアウトの自由度も高くなります。花の彫刻をあしらった墓石も数多く見られるようになってきていますが、抽象的な言葉の墓碑銘に彩を添えるアクセントとして、また、お墓に個性を手軽に表現するアイテムとして、花の図柄を彫刻した墓石は、今後さらに浸透していくように感じられます。