この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は千葉県立美術館で開催された個展で、安田操さんにお話を聞かせてもらいました。

――石彫家 安田 操さんが考える「石の魅力」とは?

「私は、最初は趣味で絵を始めて、絵の勉強になるから彫塑を勉強しだして、彫塑のが楽しくなってしまって、それから石になったって感じなんです。絵は理屈っぽい感じで、立体は体当たりでぶつかれる様な感じがいいですね。

塑像をやっていると粘土で作って完成して、これでいいなと思って石膏をとるんです。石膏をとった後って異質なものが出来るんです。粘土で作って完成して出来たものは石膏になっているってことで、型でとっているんで、そのものが出来るんですけれども、粘土で見た感じのものと石膏で見た感じのものとでは異質なものなんですよ。
でも石は1から完成までずっと自分が通していける実在の良さという所が石の魅力ですね。また磨いていくにしたがって、こういう石だよって主張してくる。縞模様だったら、だんだん縞が強くなっていったり、光るものだったら徐々に光ってくるとか、だんだん石が主張してくる所が石の魅力ですね。

石で抽象彫刻を始めて今年で13年目になるんですが、作品のコンセプトは母性というものを常に考えていて、自分はどんな人間なのかなって思っていると、いちばん強いのは母性なのかなって思ったんですね。いちばん自分が強く思っているものを作品に表現した方が良いかなと思って、母性というものをいつもテーマに作っています。

今回の作品は大地の子守歌という題名で、大地は女性というつもりで付けています。最近の作品はいちばん身近な母性の流れのようなものをいつも考えていて、自分が子どもを産んで、またその子が大きくなって、子どもを産んで次々と繋がっていく母性の流れというようなものを作りたくて作品にしました。

イタリア産ビアンコカラーラを使った「大地の子守歌」

 

塑像から石に変わったのは、塑像をやっていた頃は人体を作っていたんですけれども、この先、自分が自分らしさをいちばん出せるような素材を考えた方が良いのかなと思った時に、白いものっていうことが頭に浮かんだんです。それで白いものって何だろうなって思った時に、あぁ大理石かなぁって思ったんです。

私が借りているアトリエ長屋は習志野にあるんですけど、たまたま石橋さんという石彫をやっている方のものだったんです。けれども私は石なんか頭から出来ないと思っていた、無理かなと思っていたけれども、ここは良い環境にあるのかなと思って、それで石を1から教えて頂きたいなぁと思って。

それで新制作展に出展している佐善圭さんに教えて頂くことになったんです。だから白いものっていうのが頭に浮かんで、自分らしいものが出せるのは抽象形態だなと思って大理石の作品を13年間作り続けています。
石を始めた時は50歳を過ぎていましたので本当に勇気のいる決断でしたが、何歳であっても新しいことを始めるのに歳を気にすることはないなと思って。思い切ってとにかく自分らしい彫刻が作りたい、そう思っただけで取り組みました。

夢中でやっていたのでカッターが重いとか道具が凄く大変だとかそういったことは思わなかったです。近所が心配でアトリエのシャッターを閉め切って思いっきりカッターを使ったりしているんですけど、石を削っていって埃がブワーっと舞う様子はうわぁ綺麗だなぁなんて思って。部屋全体に埃が舞う姿を見て「あぁ幸せだなぁ」なんて思っていました(笑)。
でも今回の作品を制作している時は、真ん中の隙間の部分に手が入りづらくて機械に二度程巻き込まれてしまい手がつぶれるかなと思う瞬間があって怖かったです。たまたま作業用手袋を2枚付けていて、思いっきり引っ張ったら手が抜けたので良かったです。
ここをやったら巻き込まれてしまいそうだと分かっていながらもまた彫りたくてやってしまうので、石を吊る時等も気を付けてやらないといけないなと思ってやっています」
とおっしゃっていました。

趣味で絵から始めた安田さんですが、石が本当に好きなんだなぁという感じがお話を聞いていて伝わって来ました。
私も「明日から頑張ろう」といった感じでエネルギーをもらいました。