この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・京橋にありますギャラリーなつかで開催された砂川泰彦さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

――石彫家 砂川泰彦さんが考える「石の魅力」とは?

「石の魅力っていうのは、う〜んどうなんでしょうか。石屋さんとか石彫家の皆さんって、言わなくても全て分かり合えてるからどう言ったらいいんでしょうか。
でも彫っていると力をもらえますね。大理石は大理石なりの、御影石は御影石なりの魅力がありますが、仕上がりに向かっていくと、磨いた面が美しくて吸い込まれるような感じがあったり、作っていて形が出てくる面白さとかがありますね。

私の中では石は表現の中の素材の一つですが、私の場合は「沖縄の大地」っていうコンセプトの中で、沖縄の石っていうのは象徴するものなので、沖縄で採れる琉球石灰岩を多く使って表現しています。

学生の時は木彫をやっていたのですが、大学を出て佐久の大理石のシンポジウムのアシスタントをした時に、石彫家っていうのに惹かれたのかもしれないですね。

シンポジウムでは彫刻をアトリエの中で作っているんじゃなくて、野外で作品を作り上げていく。自然の中で石にぶつかっていくわけですよ。
彫っていると八ヶ岳が遠くに見えていて、雲が下りて近寄ってくる様子の変化を感じることが出来たり、夜はお酒を飲んで皆で歌ったりと、石彫家のスタイルが気に入ってしまって石彫を始めました。
私にとって石彫家が魅力だったんですが、石には魅力が沢山ありますね、やればやるほど。

今回の作品は春の風、Spring Windシリーズを発表しました。コンセプトは春の風、春の雨、春の嵐といった感じです。
春って意外と雨が降るんですよ。沖縄県はとくに1月〜3月にその雨を受けて植物達は芽吹いてくるんです。
その時に春一番の強い風が吹くんですけど、あの風と雨がすごく植物達に与える力を感じることがあって、そういった感じを作品にすることをいつかやりたいなと思っていたんですね。それで今回は風、雨というものをちょっと作りたいなと思ったんです。

私はサトウキビをフィールドとして、そこから何が出来るんだろうと考えたんです。それまでは他の場所で石を彫っていたのですが、沖縄県に戻った時に畑と大地から何が出来るかってことを考えていて、実際にサトウキビを自分で育ててみたんです。
農家の資格を取って3回ほど収穫をして、サトウキビから紙を作って、その紙に絵を書いて展覧会をしたんですけど、そういった出来事が作品のモチーフになっています。サトウキビを育てた時にここで感じた沖縄の台風であったり、春の風だったり、嵐だったりと、そういったことを作品にしたって感じです。

私が生まれ育った原風景を再確認し、体感したものを形に置き換えてみる。
今回の個展では、春の雨で芽吹きを促され、目覚める生命の逞しさや夏の嵐とは違う新しい可能性を秘めた春の嵐、風を作ってみました」。

イタリア産ビアンコカラーラを使った「spring storm」と砂川さん

 

今回の作品はイタリア産のビアンコカラーラと沖縄県の琉球石灰岩を使った作品で、「琉球石灰岩は石屋さんで手に入るものなんですか?」「切いくらですか?」「どういう売り方なんですか?」なんて砂川さんに色々と聞いてしまいました(笑)。

今回使用した石は勝連トラバーチンという沖縄県うるま市にあります勝連半島で採掘された石だそうです。関東にいると全く見ない石ですし、墓石業界では全く縁のない石だと思うのですが、小さい穴の開いたイタリアのロマーノみたいな魅力的な石で、大谷石や新島の抗火石みたいな感じで建築材に使われているそうです。私も一度使ってみたいなぁと思いました。