この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・六本木にあります国立新美術館で開催された「二紀展」で横山徹さん、堤一彦さんにお話を聞かせてもらいました。

横山 「石はナチュラルな素材で、鉄とかステンレスとか、ああいった人工物の素材とは違う、ナチュラルな素材だと思っています。
最近は本小松石を使っているんですけど、自然の皮肌のところや石の形がすごく好きで。採れた形自体が面白いので、それが自分の作品にマッチしているのかなと思って使っています。
金沢美大を卒業して5年目くらいから野外の彫刻展に作品を出展するようになったんですけど、大学の時は木彫専攻で、木と石を組み合わせた作品を作っていて、作品を野外に置きたいと思ってから、石に素材が移っていったんです。
石は不変性があるっていうのかな。木は外に置けば10年位で腐ってしまうし、鉄も錆びて、いずれは土になってしまう。
そういった意味では、石は永遠の素材っていうかね、同じ姿を変えないで野外に存在するっていう、それが石でないと出来ないような魅力かと思いますね。材料自体がずっと残っていくので、木や鉄では出来ないことが出来る。それが石の魅力だと思っています。

今回の作品EXISTENCEは、存在とか実存という意味なんですけど、門っていう名前にしてあります。門を作ったというよりか、イメージとして、漢字の門を愛称として付けているってことなので、抹茶碗に銘を付けるような感じですね。
大きくは存在というテーマがあるんだけど、今回の作品は門という愛称を付けている。石の皮肌を上手く残しながら磨いたりして、石の持っている温度差を出したいと思っていて。今回は磨いていたら偶然石の模様が出てきたので、これが面白いなと思いました」。

横山さんの本小松石を使った「EXISTENCE 門」

堤 「私は大理石が好きなんですよ。自分のやりたい形が素直に出るっていうか、わりと軟らかい自然から出来たもの、貝などの死骸から出来たものだから、自然のフォルムに近づけようとした時に大理石が一番合うなと思って使っています。
御影石もやっていたんですが、現実問題として材料費や消耗品とかが大理石より高くなるんですよ。野外に置くと御影石に負けちゃうんですけど、大理石のが加工がしやすいし、好きなので使っています。
金沢美大の時は先生が石彫をしていて、素材を選ぶ時に石を選んだんです。粘土も木彫もやったんですけど、石が仕事をする上でなんか良かったんですよね。先生も先輩も石をやっていたし、当時の石彫現場は活気があったんです。
作品のコンセプトは自然の植物や昆虫からヒントを得て、そういったものからイメージして制作しています。全く抽象なのかと思えば、どこかで見たことがあるような自然界の形にも思えるような作品です。自分の中で可能性がだんだん無くなってきてはいるんだけれども、まぁなんとか工夫しながら、こうやったら良いんじゃないか、こうしたら面白いかなと考えてやっています。

今回の作品はカップ、グラインダーで仕上げてから80番で手磨きをして、その後に軸付きの小さいカッターではじきながら、あまり削らないように細かく当てながらテクスチャー(表面の視覚的な効果)を付けていきました。はじめてやった仕上げですが、まぁこれはこれで面白く出来たかなと自分では思っています」。

堤さんのライムストーンを使った「繭の船」

 

今回はお二人とも金沢美術工芸大学の彫刻専攻で二紀会会員、素材も石ですが、作品の表面の使い方がとても対照的でした。
横山さんは自然石の皮肌を活かし、堤さんは人工的に仕上げたテクスチャーでしたが、お二人とも素敵な作品でした。