この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は神奈川県鎌倉市にありますポラリス☆ジ・アートステージで開催された岩崎幸之助さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

「今回の個展は石の重さで苦労しました。高台の搬入路もないような所に60個位の石を持ち上げて展示したんですが、住宅街ってこともあってキャタピラとかも使えないし、全部人力でやらねばならないってことで、石の重さって大変なんだなってことを身に染みて感じました。
石って自然のものなんですけれども、手を加えても自然のものは自然であり続ける。手を加えれば加えるほど人工物に近づいていくんですが、今自分はあまり手を掛けないで作品を作ったりしているので、より自然が残っているんですね。
少しくらい手を加えたのでは人工物にならない、自然のままの在り方を持っていてくれるから、それを頼りにして自分の場所なり空間を作っていける。その辺が自分にとっての石の魅力ですね。

人間が生きている空間の中に石があるんだけど、石はプラスチックのように全て人間が作り出したような素材ではない。自然物でありながら、少し手を加えることで生活のどこかにあるような存在になる。半分は自然で半分は人の技があるような感じで100%人間のものになっていないから、自然と人間の中間に石が上手いこといてくれるような感じがしますね。
木もそういう所があるんですけど、自分にとっては木より石のが扱いやすかったんです。造形大では石彫をやっていた先生との出会いがあり、石彫場では変な奴もいたけど温かく見守ってくれました(笑)。
それで石が面白くなり、毎日通うようになったんですけど、その時はノミで彫っていく仕事をやっていたんですが、ヘタクソなりに少しずつ彫っていって、形が見えてくると、それを手掛かりにして彫っていける。自分なりに先に進んでいっている感じがしたんです。
リズムなりプロセスが良かったし、石の中に形を見つけていくという作業が自分にしっくりきたんです。木だとどんどん彫れちゃって、形の変化に自分の感覚がついていけなくて。石は形の変わり方と自分のイメージの変化がちょうど良かったのかなぁと思います。
金属なんて鉄板と鉄板を溶接したらあっという間に形変わっちゃうでしょ。だから全然プロセスが違うんですよね。1個の中からちょっとずつ彫っていくっていう、その感じがすごくしっくりときたんですね。

本小松石、竹、水、ビニールを使った「竹簡往来」

今回の作品はインスタレーションっていって、厳密に配置を決めて展示したのではなくて、ギャラリーに石を運び入れながら展示を考えていったんです。
ギャラリーには明るい部屋と暗い部屋があります。明るい部屋はちょっと開放的な感じで石を配置して、水をためて、竹を浮かべて、水面の辺りは石に穴が開けてあり、波を起こすと音が鳴る仕組みを設けました。
暗い部屋は部屋に差し込む光を意識してちょっとドラマチックな感じで配置していったんですけど、ここの石には穴が開けてあって、その中に水を入れて、穴を叩くと音が鳴るんですけど、水が入ることでちょっと変わった音が聞ける仕組みになっています。
作品は2007年くらいから始まった水太鼓シリーズの延長にあるもの。実際に手を触れて積極的にお客さんに関わっていただこうというシリーズなんですが、遊んでいただいてもいいですし、音の響きであるとか、水が動いたり竹が動いたりといった、動きのある景色の中にひとつの情景を見ていただいてもいいですね。
石が沢山あるので計画的に音を鳴らすのではなくて、偶然に音が鳴っていく。水を揺らすのを止めても音は鳴っていて、だんだんかすかな音になっていく。そういった音の動きを聞いていただき、見る人なりに何か感じてもらえれば良いなと思って作りました」
とおっしゃっていました。