この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・元麻布ギャラリーで開催された鈴木貴雄さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

「石の魅力は、まずは素材としての圧倒的な存在感ですかね。あとは石は制約が多いので、取ったり形を変えたり、転がしたり運んだりするのにもひと苦労するじゃないですか。そこまでしてもやるのかどうなのか、という必要なやりとりを頭の中で考えたりする、その部分が必然的に生まれるんですよね。
例えば、彫刻でも粘土とかFRPとか扱いやすいものは色々あると思うんですけど、そういった素材だと取ったり付けたりが可能なので、いつまでたっても決まらないというか、進んでいかないという気持ちになるんですね。でも、石は彫ったら無くなってしまうというか、マイナスの仕事をするので、ここをこう取っていいのか、と考える時間が生まれるというか、決断力、強さみたいなもの。それが、自分が作品を作る時に重要になってくるのかなと。
そうやって考えたりしながら制作できる素材ということが、石の魅力なんじゃないのかなと思います。木もそうやってできるとは思うんですが、石ならではの硬い抵抗感が好きですね。

学生の頃はひと通り色んな素材を経験して、その中で石が一番どうにもこうにも上手くいかなかったというか、何もできなかったっていう感覚が残っていて、藝大の1年生の時には、石は一番厄介な素材だなって思っていました。
でも、石は大学を卒業して社会に出ちゃうと場所が無かったりしてなかなかできないと思ったので、今のうちに大学でやっておかないと、っていう思いがきっかけで、もうちょっと石をやってみようということになり、そこから石の魅力に惹かれてしまったって感じです。
石は黒みかげが好きですね。最初の頃はカラスを彫っていたり、夜をテーマに彫っていたりしたので、黒いイメージで黒みかげを使うことが多かったですね。黒みかげは石の中でも硬めじゃないですか。磨いていたりすると、もうちょっと軟らかい石を彫りたいなぁなんて思うこともありましたが、じゃぁ、といって実際にライムストーンや砂岩を彫った時に、叩いていく仕事とかは黒みかげならではの面白さがあるんだなぁって思ったこともあって、また黒みかげに戻ったということもありました。

黒みかげを使った「 瞬き brink 」

作品は薄い形が多いですね。あんまり塊っぽい形は作らなくて、ずっといじっているとどんどん薄くなっちゃうって感じですかね。ある程度作っていくと、もう手では叩けなくなってきちゃうので、超硬ビットとマイクログラインダーで仕上げていきます。
作品はこれを作ろうってことではなくて、彫っていくことで何かを表そうとしています。なので、もともと作るもののビジョンとかがあるわけではなく、モヤっとした中から彫ってビジョンが少し明確になったりして、彫りながらどんどん形を作っていくという。そういうことの連続で、残った形が彫刻になるのかなと。自分の考えている言葉とか、見たものとか、色々な要素みたいなものを織り交ぜながら。一本筋が通った物語やコンセプトでは無くて、色々な要素をごちゃ混ぜにして出したものが僕の作品になってくるのかなって思っています。
今回の個展のタイトル「to be continued…」は続くというか終わりが無いっていう意味ですかね。制作活動もそうですし、1個の作品に対してもそうですけど、ここまで来たら完成とか、磨いたら完成とかではなく、図面があってそこに向かって行くという訳ではないんですね。なので、続くというタイトルにしました」。