この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。
今回は東京・六本木にあります国立新美術館で開催された第102回二科展で豊田晴彦さんにお話を聞かせてもらいました。

「石で作品をつくっているのは塊感が一番強いから。彫刻って塑像のだんだんと付けていくモデリングと、カービングといって要らないところを取っていくのに分かれるのね。僕はカービングのほうなんだけど、木っていうのは石に似ているけれども、寄せ木っていう独特の技法もあったりして、完全に塊から彫り出すって感じじゃないよね。
あれはあれで魅力があるんだけれども、石にはそれが無くて、本当に一つの石の塊から要らないところをとっていく。石の中に何かがあって、それを見つけるのがすごく楽しい。あとは恒久性、耐久性があるってこと。ブロンズもそうだけれども、外でも耐えられるし、他の素材に比べて、永遠に残るっていうか、エジプトのピラミッドみたいに、ずっと残るっていうのは魅力ですね。
高校生の時に友達の家に遊びに行ったら近くに石屋さんがあって、石を叩いているところを見て、カッコイイなと思った。少年の頃って、内容は関係無しに、そういうのってあるでしょ。見た目でカッコイイっていう感じ。高校の時のそんなことが石を彫るきっかけになっているのかもしれないけど、美術の勉強を始めてからは塊感が一番強いから石をやっています。

僕が大学の時って美術大学で石を教えてくれるところって少なかったんですよね。それで藝大で石が彫れるのを知ったので入学しました。最初は石のカッコ良さだけで入ったんですが、いろんな勉強をしました。鉄も溶接したし、塑像もやったし、木も彫ったし、ひと通り勉強をして、基礎を学んで。それで3年生の時に素材の選択があり、その頃もやっぱりカービングが好きで、石を選んだんです。
塑像もいいんだけど石の彫っている工程がやっぱり好きで、だんだん中から出てくるっていうイメージがすごく好きなんですよね。あとはヨーロッパのルネッサンスの、例えばミケランジェロとか、ああいう人たちの哲学っていうのかな。もう形が石の中にあって要らないものを取っていくっていう考え方がいいなって思って今でもやっています。
学生の頃、先生方は丁寧に教えてくれたけど、技法なんかは自分で研究していくってところが多かったんですよ。すでにエアー工具等の機械はあったと思うんだけれど、学生だったから、お金が無くて、手彫りばっかりやっていました。でも、大変だとか辛いという気持ちにはなったことがないんですよ。もともと道具を使うことが好きだったので結構楽しく彫ってましたね。

本小松石を使った「 Hush-A-Bye 」

作品は今までは裸婦を彫っていたのですが、今回は衣装を身に着けた作品にしてみました。裸婦っていうのは西洋では昔から彫られていた形なのですが、もっと日常的な姿というか、わざわざヌードにならなくても、普通に生活している時の姿も綺麗だなと思って、はじめてコスチュームをモチーフにしました。
ポーズはいつもやっている塊感のあるうずくまる感じで、ねまきを着た姿を彫りました。服のひだの部分とかは今までは彫ったことが無かったし、髪の毛も今まではアップにしていたんですが、肩にかかった姿にしたり、石も今までは硬い本小松石を彫っていたのですが、今回は少し軟らかめの石を使ったり、いろいろと新しいことをやってみました。
僕は母性、母親の包容力をコンセプトに、そういったものを表現したいのですが、今回の作品は『ハッシュアバイ』という題名、日本語ではねんねんころりよって感じで、母親が添い寝して、子供を寝かしつけるような姿を彫りました。毎回ポーズを考えるのに苦労するのですが、今回の日常的なポーズのほうが、かえって自然で女性の量感を出しやすいのかなと思いました」。