銘店“石屋”シリーズ 有限会社神永石材(茨城県北茨城市)

プラスアルファの“神永らしさ”を追求していきたい

茨城県北茨城市に約3万平方メートルという広大な敷地を持ち、多種多彩な原石を豊富にストックしている有限会社神永石材。工場には大型のダイヤモンドワイヤーソーをはじめ各種加工設備が充実しており、「自社加工」にも力を入れています。代表取締役の神永大輔さんに、これまでの経歴や石という素材へのこだわりなどについて語っていただきました。

神永大輔(かみながだいすけ)さん
昭和49年生まれ。昭和10年に創業した神永石材店(現在は㈲神永石材)の三代目。
墓石販売をはじめ、「楽天市場」や「Amazon」「Yahoo」、自社サイト等で石製品のネットショップも展開。住空間における石材の活用提案などにも力を注いでいる。

 

――まずは石屋さんになるまでの歩みを教えてください。

神永 うちは祖父の代からの石屋なので、小さい頃から「将来は石屋になるんだ!」と思っていました。小学生のときに、「将来は家の跡継ぎ、大変だ」みたいな俳句を作ったのをおぼえています(笑)。
それで高校を出てからは、愛知県の岡崎産地(岡崎市)にある石彫刻の会社で5年ほど修業させていただきました。目の前に時計をおいて、決められた時間内に仏像彫刻などを作り上げる日々。熱を出したときも、注射を打ってから仕事に戻ったり。修業ですので、当時は大変なことも多かったのですが、お客様から「神永に彫ってもらいたい」と指名していただけることもあったりして。そういうのは、とてもうれしかったですね。
思い返せば、今の美術彫刻などの仕事や人と人とのつながりなども、すべて修業時代に培われたもの。あの岡崎での5年間は、自分にとっての大切な土台になっていると思います。

取材時も慌ただしく加工作業が進められていた

 

――神永さんは「常に新しいことへ挑戦している石屋さん!」というイメージが強くあります。

神永 23歳の時に修業から帰ってきて、社長になったのが29歳。それで、まずはホームページを立ち上げて、自社で加工した石製品を全国へ販売していくようにしました。それが2004年頃で、まだ「インターネットで石が売れるのか!?」と言われていた時代。ですから、石屋としては比較的早い取り組みだったと思います。
その後、中国の工場と直接取引を始めたのが2008年頃。溶岩を取り扱っている中国の石材業者さんと一緒に工場を立ち上げ、直輸入するルートをゼロから作っていきました。その溶岩でインテリア小物や食器などを作ったり、最近はアクアリウムに使ってもらったりもしています。
また、「日本の石」、中でも福島県の白河石や宮城県の伊達冠石、茨城県の桜川まかべ石などの取り扱いを増やしたり。なにか新しいことを考えて、積極的に仕掛けていくのが好きなんです。もちろん、最初はうまくいかないことも多いですが、お客さんの意見を聞きながら改良を加えていく。そういった一連の作業がおもしろいんですね(笑)。

工場内には各種石材加工機械が充実している

 

――ここ数年は大手住宅メーカーとのコラボも進められていますよね。

神永 建築業界とのつながりが生まれたのは溶岩の取り扱いを始めた頃からですね。これまでに建築家の方などからの仕事を受注したり、積水ハウスさんのいくつかの展示場で、当社で加工した石材を使っていただいているほか、住宅などにも利用していただけるようになっています。
また、最近の傾向でいいますと、石を活かしたオリジナル墓石の加工・提案にも力を入れているところです。とくに洋風のお墓は、けっこう作り込んだものも提案していまして、“ウチならではのプラスアルファ”みたいな独自色を打ち出していきたいと思っているんです。
たとえば、全て茨城県産の真壁石で作った墓石なんだけど、外国産のものよりも価格を抑えて提供したり。あとは石塔なども含めて、どんどん、こだわりの強い、よりニッチな方向にむかっていければと(笑)。このようなお墓の建立事例などもホームページを通して積極的に情報発信していきたいと思っています。

(有)神永石材が手がけた墓石の制作・施工例(すべて国産石材を使用)

国産石材にこだわった納骨室(カロート)の制作・施工例

 

――神永さんにとって「石屋」という仕事のやりがいは、どのあたりにあるのでしょうか?

神永 今はほとんど休みもなく働いているのですが、やっぱり仕事が好きなんでしょうね。とくに加工の仕事は自分が納得いくまで手を掛けないと気がすまない(笑)。やりすぎてしまうこともあるのですが、とにかくクオリティを高めていきたいと思っているんです。
あとは、こちらから石に関するいろいろな提案をしていくのも楽しいです。もちろん予算的な条件とも折り合いをつけながら、より良いものを追求していく。うちは敷地も広く、原石のストックも豊富にあるので、そういうことも大きな強みだと思っています。
そして、もっともうれしいのは、やっぱり完成した瞬間。現場で仕上がりを見て、「ああ、いい仕事ができたな」と思えるときが、一番の幸せですね。とくに想い入れのあるお墓に関しては、どちらかというと自分の作品を作っているような感覚もあるんです。

多種多彩な原石が豊富にストックされている

 

――最後に今後の目標などを聞かせてください。

神永 これからは日本の石を使った墓石・建築製品の取り扱いを増やしていこうと考えています。これほど身近に、おもしろい石がたくさんあるんですから、それを活かさない手はありません。それも、できれば、今までにありそうでなかったようなものを作っていきたいですね。料理の世界でも、材料は同じなのに、作る人によって味がぜんぜん違うじゃないですか。そういうところがおもしろいと思うので、これからも自分らしさを追求していきたいと思っています。
そして、古くなればなるほど価値が上がるようなもの、付加価値が加わって文化的に残っていくようなものを作ることができたらうれしいですね。もちろんハードルは高いと思いますけど、そのためにも設計からデザイン・加工・施工まで、トータルで良いものを作っていくための勉強は惜しまない。そういった姿勢は、これからもずっと守り続けていきたいと思っています。

 

有限会社神永石材

有限会社神永石材にある大型のダイヤモンドワイヤーソー

所在地:茨城県北茨城市磯原町内野294
TEL:0293-42-3963 FAX:0293-42-6428

【主な業務内容】
墓石製作・販売など墓石工事一式、石塀・石垣・石張りの設計・加工・施工、建築関連石材の製作・工事、彫刻品・石のインテリア雑貨の製作・販売など、石に関する幅広い業務を行なっています。

いしマガ取材メモ

神永さんが手がけたお地蔵さまが2007年公開の映画『夕凪の街桜の国』の撮影で使われたことも。また、世界的に有名なイベントなどで神永さんの制作した石作品が使用されていたり、同社の製品は様々なところで高い評価を得ています。神永さんは常に会社スタッフの先頭に立ち、石埃(いしぼこり)にまみれながら仕事に励んでいます。
また、自分で機械を改造してしまうこともあり、加工法・施工法なども独自の考えを取り入れながら「自分がカッコいいと思うものを、どんどん提案していきたい」と話してくれました。
今後は若手の育成も目標のひとつ。美術大学の卒業生など、「ものづくりがしたい人材を積極的に応援していきたい」と常に前を見据えています。