銘店“石屋”シリーズ  株式会社 俵石材店(千葉県館山市)

お参りに行きたくなるお墓づくりを心がけています。

館山城の城下にあり、地元でも有名な館山神社に隣接している千葉県館山市の㈱俵石材店。江戸時代からの歴史ある石屋さんで、周辺のお寺などにおいて数多くの建墓実績を持っています。今回は、そんな長い伝統と実績を受け継ぐ同社8代目の俵正成さんに、お墓づくりへの想いやこだわりなどをうかがいました。

俵 正成さん(昭和49年生まれ)

学生時代は卓球部に所属。中学生のときに出場した大会ではダブルスで県の1位になったこともある。現在の趣味は釣り。大自然の中、日常から離れて、魚と向き合っている時間が至福の時だという。

―まずは会社の歴史を教えてください。

 正確なことはわかりませんが、創業は江戸時代の中期頃。うちの仕事の中で、今も残っている一番古いものに神社の狛犬があるのですが、そこに刻まれている年号から計算すると、それくらいになります。

―現在で何代目になるのですか?

 関東大震災でいろいろなものが燃えてしまったので、わからないことも多いのですが、2021年に博物館の方がいろいろ調べてくれまして、私で8代目になるそうです。ちなみに、歴代でもっとも有名なのは5代目の俵光石。すばらしい石造物を後世に残した石彫家として知られています。
主としてお墓をつくり始めたのは昭和時代に入ってから。もちろん、現在のかたちになる以前のお墓は、もっと昔からつくっていたと思います。ちなみに当時は、神奈川県で採れる小松石が船で運ばれてきて、それを加工することが多かったと聞いています。

ガラスを使ったデザイン墓石

―俵さんが8代目を受け継いだのはいつ頃ですか?

 今から12年ほど前、私が35歳くらいのときでした。とはいっても、完全に代替わりをしたわけではなくて、それからも父が亡くなる4~5年前までは一緒に仕事をしていました。

―これまでの人生で、ターニングポイントになった出来事は?

 専門学校を卒業してから、茨城県・真壁産地の石問屋さんで1年半ほど修業させていただいたのですが、その時の経験は人生の大きなポイントになっていると思います。バブルの最後の頃でしたので、すごく忙しかったのですけれど、石の加工製品に数多く触れながら「自分は石が好きなんだな」ということをはっきりと自覚したんです。もちろん小さな頃から、「将来は石屋さんになる」と思っていましたが、あの修業時代が、あらためて「石屋をやっていこう!」と決意する大きなきっかけになったと思います。

―現在のおもな仕事内容は?

 先代の頃までは住宅のブロック塀の工事なども請け負っていましたが、今はお墓の仕事一本でやっていこうと決めています。このエリアは、お寺や町内などで管理している墓地が多く、そういうところが自分にとっての仕事場になっています。

―お客さんは、どういった経緯で俵さんのお店に来られるのでしょうか?

 当社で建てさせていただいたお墓を気に入ってくださっているお客様からの口コミや紹介が多いです。お寺さんからの紹介も含めると、それだけで全体の8割ほど。そのほかには、当社のホームページを見て、そこに書いてあることにご納得いただいてご来店いただくケースも少なくありません。

―そこから成約にいたるまでは?

 まずは当社の展示場を見ていただいたり、墓地へ行って、当社で建立させていただいたお墓をご覧いただくことから始めます。そしてお客様のご要望をうかがいながら、だいたい半日や一日くらいをかけて、しっかりと話し合っていきます。

―お墓づくりで大切にしていることはなんですか?

 お墓参りに行きたくなるお墓づくりを心がけています。それこそ、毎週でも喜んで行こうと思っていただけるような。そのためには、石の色やかたちなど、どれだけお客様の希望を汲んで設計・デザインしていけるかが大事になってくると思っています。

―これまでの経験で忘れられないお客さんのことを教えてください。

 忘れられないという意味では、当社でお墓を建てさせていただいたお客様全員がそうなんですけど、涙を流して喜んでくださった方のことは、とくにおぼえています。あとは、お墓のリフォームをしたときに、「前のお墓は入りたくなかったのですが、きれいにしてもらったので、ここに入れるのが楽しみになってきました」と言われたことがありまして。あの一言も忘れられません。
ただ、毎回お墓ができるまでは、ちゃんと満足していただけるのか、不安な気持ちはありますね。でも幸い、これまでお墓を建てたお客様で、クレームになったことはほとんどありません。

―今後の目標を教えてください。

 つい最近(2022年)、お墓の勉強会に参加して、五輪塔について学んできたんです。そこでいろいろなお話を聞かせてもらいまして、本にも載っていないようなことも含めて、すごく勉強になりました。五輪塔があんなに深いものだとは知らなかったので、今後は自分の手でもつくってみたいと思っています。
あとは石の産地についても再考しているところです。これまでは硬さがあって、日本の風土にも向いているインド材を主流にしてきたのですが、これからは日本の石をもっと取り扱っていこうと考えていまして、まずは勉強から始めていくつもりです。
そしてゆくゆくは、地元でオンリーワンの石屋さんになれたらうれしいですね。これからもいろいろな試行錯誤を繰り返しながら、お客様に選ばれる石屋さんを目指して努力していきたいと思っています。

 

株式会社 俵石材店

株式会社俵石材店の墓石展示場

ガラスを使ったデザイン墓石

所在地:千葉県館山市館山707
TEL:0470-22-6702/FAX:0470-24-4535
ホームページ:https://tawarasekizai.jp/

いしマガ取材メモ

普段は物静かで、あまりしゃべらないタイプだという俵正成さん。ところが、お墓のことになると、言いたいことがあふれてきて饒舌になってしまうとか。寡黙にこつこつと仕事を進めながらも、胸の内には自分の仕事に対する熱い想いを持っている、まさに昔ながらの石屋さんといった雰囲気が印象的でした。
一方で近年は、お墓に対する勉強や、ガラスを使ったデザイン墓石など、新しいことにも積極的に挑戦中。古き良き職人気質と、「ほかの石屋さんではやっていないことにも取り組んでいこう」とする先進性の、両方の要素をあわせ持っていることも特徴。同社にお墓づくりを依頼すれば、きちんと時流にも合わせた上で、間違いのない確かな仕事をしてくれることでしょう。