銘店“石屋”シリーズ (株)小林秋三郎商店/愛知県岡崎市
お墓でご先祖様の幸せを祈ることが、家と自分を整えることにつながる。
愛知県岡崎市と蒲郡市に店舗を構える(株)小林秋三郎商店は1932年の創業以来、墓石や記念碑の製作・施工をはじめ、各種石工事など、石に関する幅広い仕事を手がけている。国宝の修復工事に携わった実績もあり、その確かな技術力には定評がある。同社の三代目となる小林敬央社長に、お墓づくりに込める想いや、これまでの歩みについて、お話をうかがいました。

小林敬央さん(昭和37年生まれ)
初代・小林秋三郎氏、二代目・小林繁三郎氏の跡を継ぎ、墓石を中心に幅広い石工事に対応する。高校卒業後、佛教大学で学び、仏壇店での勤務を経て家業に入る。これまでの様々な経験をもとに「ご先祖様が喜ぶ声が聞こえてくるようなお墓づくり」を信条としている。
―小林秋三郎商店へ入社するまでの経緯を教えてください。
小林 親の背中を見て育ち、高校三年生の時には、家業を継ぐことを決めていました。私が通っていた高校は全寮制で、親孝行の大切さを繰り返し教えられていましたが、実家を離れて生活したこの三年間は、その意味を、身をもって実感する時間でもありました。
高校卒業後、恩師から「家業を継ぐなら仏教を学んでみてはどうか」と勧められたこと。そして、自分自身も仏教に関心があったことから、京都の佛教大学へ進学しました。
大学ではスリランカやタイ、ミャンマーなどの南方仏教圏について学び、僧侶になるための資格も取得しました。大学の三年・四年時にはお寺に下宿させてもらい、行事の手伝いなどもしながら通学しましたが、この二年間で、仏教のことを実践的に学べたことも貴重な経験となりました。
大学卒業後は三年間、愛知県内の仏壇店に勤務し、仏壇販売などの経験を積みました。石屋の仕事と直接結びついているかどうかは分かりませんが、高校・大学・仏壇店での経験のすべてが、今の自分を形づくる大切な人生経験になっていると感じています。
―様々な経験や学びを経て、今、小林さんが考える「お墓をつくる意義」とは何でしょうか。
小林 お墓についての考え方は人それぞれで良いと思いますが、「先祖を供養するための宗教的な存在」という視点は、とても大切だと考えています。私自身は、儒教の書物『大学』にある「修身・斉家・治国・平天下」という言葉が、先祖供養の意義を強く示しているものと思っています。
この言葉は、「自分の身を修むれば家が斉(ととの)い、家がととのえば国が治まり、国が治まれば天下は平となる」という意味で、平和な社会を築くためには、まず自分自身が身を修めることが第一であり、それがやがて家族、社会へと良い影響を広げていくという考え方です。
この「家をととのえるために身を修める」という行為に通じるのが、「神仏を敬い、ご先祖様を大切にすること」「親孝行をすること」「夫婦円満であること」の三点だと思っています。
私にとって「神様・仏様・ご先祖様」は切り離せない存在です。宗教として神様や仏様という尊い存在があるからこそ、ご先祖様は成仏できる(救われる)と考えられ、そのために、お坊さんに供養をお願いし、仏壇を祀り、お墓を建て、家族でご先祖様の冥福(あの世での幸せ)を祈る。その積み重ねが、今の日本の供養文化を形づくってきたものと考えています。
極端な言い方かもしれませんが、もしご先祖様が生前に負の遺産を残してしまったとすれば、それを、今を生きる子孫が供養を通してあがなっていく、という考え方もできるでしょう。
「親孝行」や「夫婦円満」は簡単ではありませんが、完璧でない自分と向き合い、魂を磨き上げていくためにも、お墓参りは大切な行為だと思っています。
一人一人のご先祖様が懸命に生きてきたからこそ、今の私たちがある。そして、そのご先祖様の幸せを祈る行為が「家をととのえる」ことにつながるものであり、祈りの対象としてお墓がある。近年は、お墓じまいされる方も増えていますが、ご先祖様の尊い死から学ぶ道徳的な価値や日本の供養文化が薄れていくことには、一抹の寂しさを感じています。

小林さんが手がけた石彫作品(愛・地球博に出品)
―日本人のお墓を考えるうえで、神道や仏教だけでなく、儒教の影響も大きいと。
小林 日本は古くから、神道・仏教・儒教など、様々な宗教や思想が重なり合いながら成り立ってきました。例えば、特定の宗教を信仰していなくても、クリスマスが自然に生活の中に溶け込んでいる。日本人の宗教観は、そうした柔軟さを持っていると思います。
その意味で、お墓や先祖供養についても、考え方は一つである必要はありません。私自身は、お墓は「亡くなった方のため」だけではなく、「今を生きる私たちが、より良く生きるためのもの」でもあると考えており、そうした視点において、儒教の影響が色濃く表れていると感じています。
―お客様の先祖供養への想いに寄り添った取り組みもされているそうですね。
小林 お施主様に書いていただいた写経をお墓へ納めたり、玉石に「南無阿弥陀仏」といった念仏や、お孫さんからおじいちゃん・おばあちゃんへの「ありがとう」という言葉を書いたものを納めることもあります。
想いのこもったお墓は、どこか温かく、清らかな空気を感じさせてくれます。そうした供養の心の行き届いたお墓づくりをご提供することが、私の理想です。

納骨室内を慈愛に満ちた空間にする提案も
―先ほど「夫婦円満」というテーマが出てきましたが、小林社長ご夫妻の仲の良さも印象的です。その秘訣は?
小林 具体的に何かをしていると言うことはないのですが、以前にくらべ妻の言うことに耳を貸すようになったとは思います。正直なところ、50代半ば頃までは、仕事のことや色々な悩みも抱えていて、精神的にも余裕がなく、周囲に理解されないことも多々ありましたが、妻はずっと支えてくれました。また、高齢になった両親に対しても一生懸命世話をしてくれる。これらのことには心から感謝しています。
三人の子どもにも恵まれ、娘夫婦が小林家を継いでくれることになりました。かわいい孫も生まれ、こうした幸せも、お墓を大切にしてきた恩恵かもしれません。
―今後の目標を教えてください。
小林 以前、事務所を設計してくださった先生から「仕事に妥協してはいけない」と言われたことが、強く心に残っています。世の中には妥協せざるを得ない場面もあると思いますが、お墓という尊いものを扱う仕事においては、これからも先ず自分自身に妥協することなく、真摯に向き合っていきたい。ご先祖様や亡き方々に喜んでいただけるようなお墓づくりを追求していきたいと思っています。
(株)小林秋三郎商店/お墓のかんのんや
所在地:愛知県岡崎市門前町68
TEL:0564-24-1117(代)/FAX:0564-24-1059
ホームページ:https://www.kannonya.jp
いしマガ取材メモ
今回の取材には小林社長の奥さま・加奈さんにも同席いただきました。お店で事務を担当する加奈さんは、小林社長のことを「とにかく真面目で、一度決めたことはずっと続ける人。正直で嘘がつけない性格で、すごいなという気持ちもありますが、そこまで気にしなくてもいいんじゃないかな~と思うこともありますけどね」と笑顔でコメント。その真面目さこそが、お客様からの信頼・信用へと繋がっていることでしょう。
夫婦で支え合いながら石材店を営む姿も、同社の大きな魅力。亡き方への想いに寄り添ったお墓づくりを提案してくれる石材店として、まずはお気軽に相談してみてはいかがでしょうか。



