この企画では、彫刻家が感じている「石の魅力とは何なのか?」、「なぜ石で彫刻を作っているのか?」ということをお聞きしていきます。今回は東京、日本橋髙島屋にあります美術画廊Xで開催された今野健太さんの個展でお話を聞かせてもらいました。

――石彫家の今野健太さんが考える「石の魅力」とは?

「私はテーマにしているものが曖昧なものであったり捉えづらいものなので、石以外の素材だと、気候条件等によって形が動いたりする様なイメージがあるんです。  次の日行ったら私が触った所しか形が変わっていない。それが、私がテーマにしているものを作っていく上で、信頼できる素材っていうのか、制作を繋げられるっていう気持ちがあって、そういった点で石を選んでいるのかなって思っています。

芸大の卒業制作までは作品は全て塑像でした。素材として粘土を使っていたのですが、制作中、次の日にも制作をする為に粘土が乾かないようにタオルをかけてビニールを巻いて帰るんですが、次の日にタオルを取ると、粘土の表面にタオルの跡が付いちゃっていて、それを消しているうちに1日が終わっちゃうなんて事がよくあり、なかなか制作が進まないといったイライラがあったんです。  それで先生に“君は粘土だと完成しないんだから石でやってみたら”と言われたのが石を彫り始めたきっかけです。

そして、大学4年の卒業制作で、初めて大理石で作品を作って、そこから石彫を始めたって感じです。 作業を終えて次の日に行っても、昨日のままの状態であるので、そこからすぐに制作に入れる。石だから当たり前なのですが(笑)、石には粘土のような跡消し作業が無いのが良いので、自分に合っているんだなと思いました。

私はミケランジェロのピエタ像が好きで、よく写真を見ているのですが、あの作品は1つの塊の中から構成上何人もの人を作る、群像を作って彫刻を成立させているんですが、物としての構造上の支えになっていたりもします。1つの塊から1つの作品を彫り出すうえで、いくつもの人間が組み合わさる姿で作品を作るっていう所に興味があります。

今回の作品は“あいとなるものもの=相隣る者々”というタイトルをつけています。一人の人間の中で、男性と女性であったり、相対的なものであったり、イメージが少しずれているものを立体的に重ねたり組み合わせたり残像の様に表すことで、作品の前を歩いた時に見えてくるもの、組み合わさっているもののイメージが変わってきたり、ずれたりすることを取り込んで、一人の人間の中にいる複数の人物像との関係性みたいなものを表現したいと思って制作しています。

学生時代は一人の人間の組み合わせで表現をする作品を作っていたんですが、そこから人間の中の別の人、パーツであったり別のイメージであったり、別のものを組み合わせることで出来る彫刻、という形に変わってきていますね」

とおっしゃっていました。

イタリア産大理石・フィレットロッソを使った「あいとなるものもの」

今野さんは1980年東京都生まれ。2004年東京芸術大学美術学部彫刻科卒業、’09年同大学大学院美術研究科彫刻専攻博士後期課程修了。個展は’07年「曖昧な決断、はっきりとした迷い(現代HEIGHTS gallery DEN東京)」、グループ展は’09年「彫刻 労働と不意打ち(東京芸術大学大学美術館陳列館)」、’10年「21C⑊カタチの今 vol.2―思考する人体・語りかける彫刻(新宿高島屋)」等多数。  今回は大理石をメインに木彫を含めた10点を発表されていました。