銘店“石屋”シリーズ (有)太田工房/香川県高松市
ミリ単位の精度を追求し、一つ一つの墓石に技術と想いを込める
香川県高松市牟礼町の(有)太田工房は、墓石の加工メーカーとして80年以上にわたって実績を重ねてきている。細部まで妥協を許さない「ものづくり」への姿勢は、得意先である石材店からも評価されており、数十年にわたって取引が続いている石材店も少なくない。そんな同社の四代目となる太田一馬さんに、仕事に込める想いや現在の取り組みなどについてお話をうかがいました。

太田一馬さん(昭和54年生まれ)
(有)太田工房の四代目。大学卒業後、家業である同社へ入り、墓石加工の技術と経験を磨いてきた。小・中・高と学生時代は野球を続けてきた体育会系人。野球を通じて培った粘り強い性格は現在の仕事にも活かされているという。
―はじめに、会社創業の経緯と、現在の主な仕事内容を教えてください。
太田 当社は戦後、初代の曾祖父・太田重吉が鳥居の製造を主として創業しました。その後、祖父・太田義弘、父・太田昭二へと受け継がれ、地元で採れる庵治石を中心とした墓石の加工を主な仕事としてきました。
工場は今の場所に移る前は、自宅の隣にありました。小さい頃は、その工場跡地でよく遊んでいたことを覚えています。そう考えると、子どもの頃から石や工場が身近な環境で育ってきたんだなと思いますね。
現在は、主に関西の石材店さんからご注文をいただき、庵治石や大島石(愛媛県産)、天山石(佐賀県産)などを使った墓石を加工して、完成した製品を納めています。父と自分、従業員さんの3名体制で、それぞれの経験を活かしながら墓石づくりに取り組んでいます。

太田工房の工場内にて
―墓石の加工業とは、具体的にどのような仕事をされているのでしょうか?
太田 採石場で採れた原石を仕入れて、工場にある機械を使って切っていきます。そして、切り出した石を、ご注文いただいた墓石の形に合わせて整え、きれいに磨いて仕上げていきます。
言葉にすると簡単なのですが、原石には小さなスジやキズなどが入っている場合もあり、そうした部分を避けながら切っていかなければなりません。庵治石の場合、製品として使える原石は全体の数パーセントとも言われています。ですから、使える部分をしっかりと見極めながら、粘り強く、辛抱強く、石と向き合っていく姿勢が求められます。
また、加工ではミリ単位の精度が求められることも多く、そこに対応できるかどうかも、メーカーとしての技術力を左右するところです。さらに、墓石の各パーツに使う石の目合いや色合いが揃っていないと、全体として不格好な仕上がりになってしまうこともあります。
磨きの作業では、目の粗さ(番手)が異なる9種類の研磨盤を使い、目の粗いものから細かいものへと段階的に替えながら、石に艶を出していきます。この9工程では、どのタイミングで次の番手の研磨盤に替えるかの判断が重要です。そこを的確に見極めることで、石の地が締まった、シャープな研磨面に仕上げることができます。そうした判断力も、長年の経験を積み重ねることで、少しずつ身に付いていくものです。


同社が加工・納品した墓石の建立例
―御社では「クレームがないのが当たり前」という姿勢で仕事にあたっていると聞きました。
太田 当社では、ご注文いただいた石材店さまへ加工した墓石を出荷する前に、最終的な検品を行ないます。ただ、それだけではなく、加工の段階から寸法や矩手(かねて/正確な直角)、石の目合い・色合いなどを厳しくチェックすることを徹底しています。そのため、最終の検品段階で不具合が見つかって作り直すようなことは、ほとんどありません。
ご注文いただいた墓石は、一つ一つの加工工程を終えるたびに細かくチェックしています。ですから、得意先の石材店さんから「先日お願いした、あそこの部材のことなんだけど」と聞かれたら、頭の中にその部材の映像が浮かんでくる。それくらい、一つ一つの製品を自分の目で確認してから出荷するようにしています。
―例えば、同じサイズの墓石が二つあったとして、太田工房さんで作った墓石と、別の会社が作ったものを見分けられるようなこともできますか?
太田 たぶん、できると思います。加工するときは、ずっとその石と向き合っていますから、石の色合いや加工の精度など、細かいところまで頭に入っています。だから、手塩にかけて加工した墓石が完成して、出荷する前になると、少し寂しい気持ちになるくらい(笑)。
それだけ一つ一つの墓石と向き合って仕事をしていますから、おそらく見れば、自分たちが加工したものかどうかは分かると思いますね。
―墓石加工の仕事のやりがいを、どのように感じていますか?
太田 やっぱり、お客さんから「良い製品をつくってくれてありがとう」と感謝していただけるときですね。得意先の石材店さんの中には、実際に墓地へ建立された状態の写真や、施工の工程などを見せてくださる方もいます。自分たちが手塩にかけてつくった墓石を、大切に扱っていただいていることを感じられるのは、この仕事の大きなやりがいの一つです。
自分は三人兄弟の長男で、小さい頃から「石屋さんにならないといけないのかな」という気持ちはありました。最近は石材業界も厳しい話題が多く、これからのことを考えると不安な気持ちになることもあります。
それでも、工場で石と向き合っている時間には、なんとも言えない楽しさがあります。だからこそ、これからも自分たちが自信を持って提供できる墓石づくりを追求していきたいと思っています。
―ここでパーソナルな質問として、趣味や特技について教えてください。
太田 小・中・高とずっと野球をやっていました。セカンドのレギュラーとして出場していて、中学時代には香川県で1位になったこともあります。今は野球をやっていませんが、高校野球を見ていると、血が騒ぐような感覚はありますね(笑)。
それから、大学時代に洋服店でアルバイトをしていたこともあって、今でも古着のTシャツ、スニーカーが好きです。スニーカーは今も30足くらい持っていて、高校時代から履いているものもありますし、服も同じで、高校時代に着ていたものを今でも使ったりしています。服やスニーカーは、長く使い続けることで味わいが増してくる良さもあって、本当に好きですね。
新しい服やスニーカーを買うことが、仕事へのモチベーションにもなっているのですが、最近はどれも高くなっていて、限られたお小遣いの中で、なかなか手が出せなくなっているのも辛いところです(笑)。



―今後の目標を聞かせてください。
太田 当社は、原石を仕入れている山石屋さん(採石業者)とも長くお付き合いさせていただいており、人と人とのつながりや信頼関係を大切にしています。
地元・牟礼町の石材業者の若手で組織される「石栄会」にも所属しています。メンバー同士で情報交換をしたり、お互いに仕事を助け合ったりするなど、同業の仲間とのつながりも大切にしています。
また、最近では庵治石を活かした小物づくりにも取り組み、一輪挿しや箸置きなどを製作・販売しました。庵治産地の加工メーカーとして、これからも間違いのない墓石づくりを追求していきながら、庵治石の魅力や石製品の市場を広げていけるような取り組みにも積極的に挑戦していけたらと思っています。

「庵治ストーンフェア2025」における㈲太田工房のブースにて、同社で加工した墓石と太田一馬さん
(有)太田工房


太田工房の工場内にて
所在地:香川県高松市牟礼町牟礼3605-2
TEL:087-845-9871
いしマガ取材メモ
「精度レベルが高く、その上で、石の目合いや色合いがビシッと揃っている、最高の墓石づくりを目指しています!」と話す太田一馬さん。「見れば自分たちが作ったものかどうかがわかる」というほど、一つひとつの墓石と向き合っており、その言葉の端々からも手がけた墓石への愛着が伝わってきます。
太田工房では、石材店から依頼を受けて墓石を加工するだけでなく、エンドユーザーからの問い合わせにも対応しています。「大切な人をお祀りするお墓だからこそ、確かな品質のものをつくりたい」。そんな方は、まずはお気軽に同社へ相談してみてはいかがでしょうか。
2人のお子さんを持つ父親でもある太田さん。「これからも、前向きに、子供たちのためにも頑張ります!」と笑顔で話してくれました。


